オオカミ少年の成れの果てオオカミ少年の成れの果て
虎杖悠仁は一言で言うと生意気か可愛いくないとか言われるタイプである。それは悠仁自身も分かって居るし、わざとでも有るのでそう思われていて構わない。両面宿儺の器、生かされた命を救ってくれた伏黒にも担任の五条悟にも悠仁の態度はあまり良くない。紅一点の釘崎とは仲も良くない。ツンケンとしていて田舎のヤンキーなんて言われている。今日も任務帰りでもある公園の前で伊地知の迎えを待ちながら悠仁は五条に与えられたスマホを弄りながら2人から目を逸らしていた。そんな時だった目の前にサッカーボールが転がって来て悠仁の脚に当たる、悠仁は視線をサッカーボールに移してすぐに顔をあげた。目の前には小学校の高学年ぐらいの児童が居たので悠仁はサッカーボールを拾うと二人から離れて歩き出す。
「ほら・・危ないから」
「・・・ありがとう」
悠仁が公園内を見ると他の子は居ないし何処か寂しげなその子に悠仁は微笑んだ。
「一緒にサッカーするか?」
「えっ?お兄ちゃんできるの?」
「ちょっとだけだけどな」
その言葉に児童が目を輝かせたので悠仁もはにかんだ。
「ちょっと待ってな」
子供の頭を撫でると悠仁は二人の元に戻ると少し眉を潜めながら、口を開く。
「俺、遅れて帰るから先に帰って」
「あっ?なんでだよ?」
「・・・・・」
釘崎の言葉に悠仁は大きな溜息漏らすと釘崎が舌打ちする。
「虎杖・・勝手な行動をするとあの人が怒られる」
伏黒が誰の事を言って居るのか悠仁もよく分かって居るがそれすらも聞いてないふりをする。
「じゃあと宜しくな」
「おい!虎杖」
「辞めとけ・・アイツが言う事聞かないの今更だろ?」
後で目隠しにチクッとけとぶつぶつ愚痴る釘崎に伏黒も溜息を漏らすのだった。その後伊地知に迎えに来てもらった2人は五条に会いに行き事情を話すと、五条は溜息をついて
「いいよ確認してくるから」
と呟き二人の前から消えるように居なくなった。
どのぐらい遊んだのか悠仁にも分からない、お互い汗ダクでずっとボールを追いかけて遊んだ。笑顔の悠仁と楽しそうなその子はずっと笑い声をあげていた。本当は父親とする予定の練習を悠仁と楽しんだ様で気が付けば日が傾いていて、その子の母親が迎えに来て別れたのだった。
「喉乾いた」
高専の制服で遊んでいたから汗もかいたし暑い。自動販売機の前でスポーツ飲料を買おうとポケットをあさり掌を見詰める。
「あっ水しか買えん・・」
「それは良くないね?熱中症で脱水状態だよ?悠仁」
「えっ?五条先生?」
後ろから長い手が伸びてきて、コインが入るとピッと機械音と共にガタンと音が響く。
「取りな?それ悠仁の」
「・・・・いらんし」
「駄目、それ飲みな」
「・・・・・」
横を向く悠仁に五条は飲料を取ると手渡そうとするが悠仁は子供のように手を後ろに回す。
「僕は口移しで呑ませても良いけど?それにする」
その言葉に悠仁は驚いて目を見開く。ニヤニヤする目の前の担任を信じられないとばかりに見詰める。
「答えないって事はして欲しいんだね?可愛ね悠仁」
飲料のキャップを開ける五条に悠仁は手を伸ばす
「飲む!貰うから辞めて・・・」
顔を逸らした悠仁の頬がほんのり色ずくのを見て五条はくすりと笑う。
「素直にしないから恥ずかしい目に合うんだよ悠仁」
飲料を渡されて悠仁は息を小さく飲むと小さな声で
「ありがとうございます」
と答えた、それを聞いて五条は口元を綻ばせるのだった。寮に五条と戻ると悠仁はすぐに自室に向かう、シャワーを済ませると五条に買って貰った飲料のペットボトルを見てハニカム。大好きな人に買って貰ったそれをつつきながらゴミ箱を見つめた。
「捨てないとただの気持ち悪い奴だよな俺・・・」
それでも捨てずらくて、不意に外を眺めたら窓の外に花が咲いていたので悠仁はそれを1輪つむとペットボトルに水を入れて挿した。
「暫くは置いとける」
机に置くと椅子に座りそれを眺める。
「大好き・・五条先生」
決して言わない言葉を小さく呟く。
「伏黒も釘崎もあんがと・・・」
誰も居なければ素直に言える言葉は決して本人達には伝えない。大勢に囲まれて死ねとは言われたが、自分にその資格があるかと問われたら、無いだろうと悠仁は思う。
静かに目を閉じるとうとうとしてすぐに眠ってしまった。
次の日、悠仁はだるい体で五条を他の二人と待って居た。多分、ベッドに入らないで寝たのが原因だと分かって居たが、休みたくないので二人と距離を置きながら立って居たのだが
「アンタ・・帰れよ」
「はぁ?なんでそんな事言われんといけんの?」
「気付いて無いとでも思うのかよこの馬鹿!」
釘崎に近寄られて固まると悠仁のお凸に柔らかいものが当たる。
「やっぱり熱があんだろ?倒れる気!」
「大した事ねぇし!」
「どう見ても大したことある様にしか見えないんだよ!」
釘崎に怒鳴られて悠仁の体が跳ねた。
「虎杖・・多分熱が高い」
伏黒にも言われ悠仁は俯くと手を握る。
「大丈夫だからほっとけよ」
「あぁ?どう見たら大丈夫なんだよ?」
「はーいはーい!君達また喧嘩?仲良いよね」
遅刻して来た担任の五条は注意するように手を叩いて喧嘩を止めようとする。
「おい!コイツ熱があんぞ?」
「なんで一々言うんだよ!」
釘崎が五条に報告すると悠仁は嫌そうに声をあげる。しかし釘崎の言葉を聞いて五条は近づいてお凸を悠仁に重ねた。
「本当だぁ!はい悠仁はお休みね」
「やだ!行く!」
「駄目に決まってるでしょう?よいしょっと」
小さな掛け声をあげて五条は悠仁を抱き上げた。
「なぁ!離せって」
「任務は2人に任せるね?僕は悠仁を寝かせてくるから」
「分かりました。虎杖早く治せよ」
「了解!お土産買って来てやるから寝てろよ」
「伊地知が来させるから」
その言葉に2人が頷くと悠仁がバタバタ暴れる。
「休むから!1人で大丈夫」
「駄目に決まってるだろ?」
五条は悠仁のおしりを軽く叩いた。
「ひゃぁ!」
「はい!いい子にしてね」
「じゃ俺達行ってきます」
「うん!頑張ってね!恵と野薔薇」
その言葉に伏黒が頷いて野薔薇が溜息をつくのだった。
自室に連れ戻されてベッドに座らされると、五条は備え付けの冷蔵庫を買ってに開ける。
「悠仁?何も無いじゃん?待ってなとりあえず飲み物買って来るから」
「・・・・いらん」
「・・・・・・」
「寝てたら治る」
「あっそう」
冷たくなる五条の声に悠仁はびくびくと目を閉じた。ゆっくりと近づく足音に怒られると思い顔を背けると、顎を掴まれて向きを変えられる。
「悠仁、目を開けて」
嫌々と首を振る悠仁に五条が柔らかく笑う気がして悠仁は唇を噛む。
「悠仁?悠仁君」
子供をあやす様に声を掛けられて悠仁は目を開けた、目の前には綺麗な顔があり、そして青空を思わせるような綺麗な瞳があり悠仁は赤面して固まる。
「いい子で待ってね?」
「あう・・・」
「返事出来ないの?仕方ない違う方法で治療しようか?」
「えっ?五条先生?」
五条はニヤニヤしながら顔を近づけて悠仁の唇を撫でる。
「風邪は移すのが1番の治療だよ」
「ちょっと!待って・・・んんっ?」
重なる唇をに悠仁は驚いて薄く開くと、五条の舌が口内に滑り込みキスも初めてなのにいきなり大人のキスをされて悠仁は五条の服を握り込む。すると大きな掌が支えるように悠仁の背中と腰に回った。
「ふぁ・・・んっ!」
ちゅうと唇が離れると悠仁は涙目でくったりとする。
「可愛いな・・早く食べたい」
悠仁をベッドに横たえると五条は不意に机を見て微笑む。
「なになに?悠仁可愛い事するよね?」
五条の買ったペットボトルだとすぐに分かったのは自分の呪力のせい。
「さぁ着替えさせたら買い物して来ようかな」
熱が上がったのかトロントした悠仁を着替えさせるとその鎖骨に甘く吸い付く。
「可愛いね僕のオオカミ少年君」
それから悠仁が目を覚ました時には五条は居なかった。少し寂しそうに思いながらも悠仁は机に目をやると、ペットボトルにはか綺麗な花が1輪ささっている。
「ももの花?」
下には五条からのメモがあり、毎週持ってくるよって書いてあるのを見て悠仁は驚いてその紙を眺める。
「別に花とか好きじゃねし」
呟きながら冷蔵庫を見ると、これぐらい食えと可愛らしい字があり、冷蔵庫を開けるとプリンやゼリーと飲み物がある。
「あいつら・・移ったらどうすんだよ」
それでも嬉しくて悠仁は座りながら喜んだ。
2日も休んだ悠仁はゆっくりと教師に入ると同級生と目が合う。
「おはよう虎杖」
「良くなったのか?」
伏黒と釘崎に言われて悠仁は小さく頷く。
「うっす・・・」
悠仁は一瞬立ち止まると二人の机に何かを置いた。それを驚いて見詰める二人は悠仁の顔と交互に見やる。
「何よこれ」
「別にいらんかったら捨てて」
悠仁は眉を潜めて横をむくと机に座り外を見る。ガサガサと音がして隣を見ると伏黒と釘崎が袋を開けている。
「今みんの?」
「気になるでしょ?」
「美味そうだな」
出されたカップケーキに目を輝かせる2人に悠仁が驚きと外を見詰める。釘崎がケーキをかぶりながら悠仁を見つめて微笑んで伏黒をつつく。耳が赤い悠仁に2人が顔を見合わせて小さく笑うと口を開く。
「美味しいじゃない?また作りなさいよ」
「ありがとう、虎杖」
「もう作らんし、黙って食って」
小さく呟く悠仁の耳が更に赤くなり2人が嬉しそうに見つめるのだった。
約束通り五条は悠仁に1週間事に花を届けた。向日葵、次の週はりんどうと四葉のクローバーのセット。悠仁はそれを眺めるのが好きだった。大好きな五条からの贈り物、花を持ってくるとお礼は無いのとアイマスクを外して顔を近づけてくると悠仁に唇を重ねる。
「淫行じゃん」
唇を押さえながら悠仁は目を瞑る。少し照れながら頬をかくとまた花を見つめていると部屋のドアが開いた。
「悠仁!ただいまー」
「・・・・おかえりなさい」
悠仁は驚いて固まると五条はテクテクと近づけてくると先に唇を重ねてきたので驚いて後ろに下がる。
「何すんの?!」
「後でも先でも変わらないでしょう?」
「いや・・淫行じゃん」
「えっ?こんな可愛いキスが♡悠仁可愛いね」
楽しそうに距離を縮める五条は悠仁の後ろ頭を掴むと唇を重ねて、激しくキスをして舌を絡めて吸い上げる。
「ちょっと・・んっ!五条先生!」
「可愛い可愛い僕の悠仁♡」
「えっ?五条先生?」
悠仁を抱き上げると五条はベッドに転がすと覆い被さる。
「いただきます」
「いただき?ふぇ?はぁ?ちょっと?」
「可愛い嘘つきオオカミ少年の悠仁君」
手首をシーツに縫い付けられて悠仁はそのまま五条に美味しく頂かれたのだった。朝起きるとペットボトルの一輪挿しが無くなっていて、綺麗なブルーとオレンジが混ざりあったガラスの一輪挿しがあり、そこにはアネモネがささっていた。
「はぁ・・・分かりにくし」
与えられたスマホで花を調べてついでに出た花言葉に悠仁は真っ赤になる。
「で?返事は?」
後ろから抱きつかれて悠仁は眉を寄せて横をむく。
「嫌い・・諦めて」
「よし付き合おう!決まり♡」
「はぁ?」
ニマニマ笑いながら五条は悠仁のこめかみにキスをする。
「天邪鬼な悠仁の考える事なんてすぐに分かるよ!大丈夫、僕最強だから」
「いきなり何よ?俺の話し」
「素直になりなよ?大丈夫、僕も恵も野薔薇もみんな悠仁が大好きだよ?どんなに頑張ったって嫌いになって貰えないんだから」
その言葉に悠仁が狼狽えると五条はぎゅうと体を抱きしめる。
「大好きだよ悠仁!愛してる」
「っう・・」
「1人にならないで良いんだよ」
その言葉に悠仁の綺麗な瞳からぽろぽろと涙が落ちる。五条は悠仁の体の向きを変えて抱きしめた。
「可愛いね僕の悠仁」
「俺も・・・先生が・・・ぃ」
小さな言葉に五条は優しく微笑んで頭を撫でるのだった。
それから悠仁は少しづつ皆と近づいて、笑うようになって行く。
「ただいま!」
明る大好きな声に悠仁が顔をあげると手に紙袋を持った恋人が笑っていて野薔薇に手渡すと悠仁の横に並ぶ。お土産のお菓子に夢中な同級生を他所に悠仁はそっと五条の手を握る。
「んっ?」
悠仁が背伸びをして五条が屈むと耳元に小さな声が聞こえる。
「俺、五条先生がお土産でいい」
少しづつ甘えてくる悠仁に笑いながら五条は彼を抱き上げると二人の前から悠仁を連れて消えた。
「こりゃあれだは」
「伊地知さん・・また大変だな」
呆れながらお菓子を食べる2人が報告書が届かず胃を痛める伊地知を思うのだった。