恋に落ちる、花火が上がる好きな人が恋に落ちる瞬間を、僕は見てしまった。
「本当にすみませんっ、あのクリーニング代を」
「気にしないでくれ。この暑さだ、すぐ乾く」
「でも」
自宅から徒歩五分の距離にカフェがオープンした。
通り沿いに面した大きな窓から観葉植物が生い茂っている店内を見て、赤井の顔がすぐに浮かんだ。
赤井が植物に興味があるかどうかは知らないけれど、まるで熱したフライパンのようなアスファルトの上を歩くよりも、オアシス然としたカフェに座っているほうが似合う。
だから赤井を誘うつもりで『たまたま通り掛かった』ところ、ジョウロで鉢植えに水遣りをしていたカフェの女性店員が赤井にぶつかった。
彼女は何度もお詫びの言葉を述べた後、僕たちを店内へと案内し、清潔なタオルと看板メニューだというレモンチーズケーキを出してくれた。
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