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    pakupaku_ens

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    キミとじゃ関係性イベント、開催おめでとうございます!
    何も新作ないのも申し訳なさすぎて書き散らしていた姫たちとフウガとの散文を載せておきます……。オチはないです。

    お姫様たちと稀代の愚王一、凪

    お姫様に憧れた。

    マイカの里で、美しい紅葉たちのようにひらひらと舞う巫女たちはさながら御伽話の姫達のよう。そのなかで、ひときわ美しく愛らしく咲いていたコズエ様はとても綺麗で里の皆の憧れだったと、度々母は言っていた。

    優しく力のある王様に見初められて、大きな城に住み、美しい着物を着て、かわいい王子と姫に恵まれて幸せのまんなかにいる王女。きっと毎日美味しいごちそうを食べているのだろう。

    わたしもいつか王子様に見初められて、城に招かれたりしないだろうか。

    お母さんは美人だった。いつかわたしもお母さんのようにきれいな大人になりたいと思っていたし、お母さんは口癖のように私をかわいいねえ、お姫様にも負けない美人さんになるよ、と褒めてくれた。周りにも、笑った顔はイズミ姫様の小さい頃にそっくりだと言われたりして、もしかしたら夢が叶うんじゃないかって、わたしはますます夢想した。

    だから、勘違いした。自分を選んだ王子様が、いつかわたしを幸せにしてくれるのだと。

    わたしはヒーローにならなくてはいけなかった。本当は、痛くても苦しくても前に進まなければならなかった。このままが続けば満足と、心地よい場所に留まり続けたのだ。進む体力も気力も得られなかった。否、犬には与えていたのだから、得ようとしなかったのは自分自身だ。

    こんなことを言うのは烏滸がましいのだろうけど、自分を大事にできなかったのは私もあのお方もきっと同じだ。私達は似たもの同士だから惹かれ合ったのだろう。



    二、泉

    お姫様に、ヒーローに憧れた。

    ミカグラ島の成り立ちとして、子供の頃から繰り返し聞かされる御伽話。

    悪いお殿様から、格好いい忍者がお姫様を見事に攫って、見たことのない素敵な場所に連れて行ってくれる。そして二人は辿り着いた地で幸せに暮らすのだ。

    良い家柄で幼少期より花嫁修業を積んだ大巫女。マイカの王たる父を敬い支え、伝統を重んじる母は美しく優しかった。

    人の上に立つという事をよく理解していて威厳があり、同時によく笑い、どこか愛嬌のある頼りになる里長。里の皆から信頼され、敬われ、愛された父は私も兄も憧れだった。

    周りの皆は優しいけれど、漠然とした満たされなさがあった。

    私を最高の場所へ攫って行ってくれる忍者さまは、モクマだと信じてた。

    でも、違った。

    アッカルドは突然私の目の前に現れて、あっという間に私を新しい世界へ連れ出してくれた。そこにはこれまでに見たことのないような刺激、自由と、喜びと、無限の可能性がキラキラと燦めいていた。私の世界はまるで変わった。彼こそが私の忍者さま、否、もっとまるごと世界を変えてしまえるヒーローみたいな人だった。

    だから、勘違いした。今度は自分が里をまるごと変えるヒーローになれると。湧き上がるこの情熱が、全てを変えることができるのだと。誰もが愛してくれたお姫様なら、きっと里の皆を導いていけるのだと。

    そして、私は間違ったのだ。守るべきものの優先順位を。私は測れなかった、里の者達の、そして兄上の矜持がどれほどに傷ついて、歪んでいるのかを。それがどんなに邪悪なものに変わりつつあったのかを。

    取り返しのつかない結果になってからしか、兄上も私も気付けなかった。湧き立つ気持ちに抗えず、愚直に前に進むことしか出来なかった。認めたくはないけれど、私達は似たもの兄妹だったのかもしれない。





    三、梢

    お姫様でしかいなかった。

    生まれた時から伝統的な歌と踊りと作法を学び、後で思えば花嫁修業を叩き込まれていた。

    伝統を重んじるのは、王族の努めだと心から信じていた。

    王は強くしなやかで、優しかった。体力がなく脚が丈夫ではなかった自分を気遣い、背負ってどこへでも連れて行ってくれた。貴方についていきたいと思っていた。逞しい王の背中を眺めるのが好きだった。

    里の皆にも受け入れられ、たくさん愛された。間違いなく自分はお姫様だった。

    息子も娘も可愛かった。彼らはいつでも、一生懸命で聡明で礼儀正しかった。兄は真面目で思慮深く、妹は賢く純真で朗らかだった。

    自分は物事の、大切な子供達の根幹を理解しようとしなかった。いつもその表面の、大事な気持ちの先端にしか触れてこなかった。

    自分は嫁いでからずっとお姫様で、王の妻で、巫女でしかいなかった。息子は生まれてずっと王子のままで、王でしかいなかった。自分も息子も、そういうものだと思っていた。自分達の人生にさえ、本当は他の選択肢が枝葉のように並んでいたことなど、考えたこともなかったのだ。


    でも、もうお姫様では無くなった。これから何になるのか、なれるのか、ならせて貰えるのか。悩みは尽きない。そして、将来を一緒に悩んでやるべきだった息子は、もう居ない。



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