大祭カグラからおよそ八ヶ月後、オフィスナデシコ
「〜♪」
とある平日の二十三時、オフィスナデシコ。雑然と積み上がった書類の束の上に投げられていたタブレットの画面が光り、おもむろにコールが鳴った。
部下が寄越してきた報告書の素案――集約印刷とはいえ少々細かすぎる字がぎっしりと並んでいる、これを印刷したのはきっと若手に違いない――をマーカー片手に追いかけていたナデシコは、浅い溜息を吐いた。こんな夜更けに私用タブレットに連絡を寄越すなど、ろくな知らせじゃないだろう。今日は日を跨がずに仕事を畳められると思っていたのだが。
「〜♪〜♪」
「はぁ、やれやれ……。」
立ち上がることなく、身体を傾け横着気味にタブレットへと手を伸ばす。画面をちらりと見やる。するとそこには久方ぶりの、あるいは初めてかもしれない人物の名前が踊っていた。急いで通話をオンにする。
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