手合わせ遠い。
どれだけ登ってもたどり着けなかった滝の上よりも遥かに。圧倒的な存在は大きく、己の前に立ちはだかっていた。
父は穏やかな人だ。物腰は柔らかく、無駄な争いも犠牲も好まない。
母といる時なんて、父が気圧されてしまうほどだった。あの国軍最高司令官も、母が相手では敵わないのだ。それほどに、とにかく優しい父の背中をずっと見てきた。
王族としての在り方、振る舞い、勉学、すべてにおいて完璧な見本となる人物が一番近くにいてくれた。
なのに、どうしてこんなにも遠いんだ?
ぎゅ、と柄を握り直すと、マヘンドラは前を見据えた。姿勢良く剣を構える父──アマレンドラがもう一度深く息を吸い込んだ。
来る!
地面を蹴った足が大きく踏み込む。ぐん、と鼻先が目の前まで来るほど近くなる距離にマヘンドラが怯んだ。向かって来るとわかっているのに、一切迷いのないその動きと威圧感が、マヘンドラの動きを鈍らせる。
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