鯉月とごはん「なんですかこれは」
月島の眼前には桃色、黄緑、黄色、紫などの丸い繊細なパステルカラー達が白い化粧箱に並んで収められている。
「マカロンだ」
「まか……ろん……?」
「本気か月島ァ……」
「冗談に決まってるでしょう。そういうことを聞いているわけじゃありません」
訂正。月島の眼前には、かわいらしい、およそ月島に差し出されるには似つかわしくないマカロンのボックスを手にした鯉登がいる。
月島は食堂にいた。ネクタイを胸ポケットに押し込み、袖をまくり、カツ丼を前に手を合わせていたとこに鯉登が突撃してきたのだった。
月島が事務員として勤めている大学に鯉登が新入生として入学してきたのはつい4月のことで、手続きのために窓口で受付を担当した月島に対面した鯉登は、傷も髭もシワもない、随分と若々しい笑顔で喜びの雄叫びを上げた。何かと話しかけてくる年若い不思議な昔なじみに「仕事の邪魔をしないでください」とピシャリ突きつけてからはこうして昼休憩や終業のタイミングを見計らって懐かれている。
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