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    hauntedxmansion

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    hauntedxmansion

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    画墓🎨⌛
    本当にただ塗っただけ?

    なんということはない。
    いけ好かない調香師から半ば押し付けるように渡された大量のクリームを持て余していて、たまたまそれを必要とする人物が目の前にいる。ただそれだけの事だ。
    仰向けに寝かせた墓守の、丸い頭を自分の膝の上に乗せる。不安気に見つめてくる赤い視線には気付かないフリをして、肩の下あたりまで開けられ露わになった白い肌に同じ乳白色を落とした。
    自分の腹側から高くて間抜けな声が聞こえてくる。冷たさに身動ぐ細い身体をやんわりと押さえ付けながら塗り拡げれば、仄かに甘い上品な香りがふわりと漂ってきた。
    アイリスをベースに調合したクリームは、フレグランスとしても愉しめるように他の素材とも合わせたと彼女が説明していた記憶を思い出す。
    荘園(ここ)に来る前は名の知れた調香師だったんだろう。創作物に関しては僕には到底及ばないだろうが、その充分な技量にフンと小さく鼻を鳴らした。
    怯える眼前の男のデコルテに両掌を踊らせて、浮き出た鎖骨を戯れに指で引っ掻くと、堪えるような吐息と小さな声が聞こえてくる。
    別の意図を持って震え出したその身体に構わず薄い肩から筋の張った首を撫で上げてやれば、急所を捉えられた恐怖からか、ひ、と引き攣ったような声を上げた。
    無意識の内にゴクリと唾を飲み込む。クリームを少量足した両手で顎下を擽り、フェイスラインをなぞり、小さな両耳の辺りで手の動きを止めた。
    仰向けになった事で暴かれた秘密の赤色。普段見えている左と合わせたその対の目は今にも溢れ出しそうな涙の膜でゆらゆらと揺れている。血溜まりにもきらめく宝石にも見える芸術的な美しさ。だからこそ、その美を歪ませたくなる衝動に駆られる。
    「墓守、アンドルー・クレス、僕の芸術品。お前は僕の激情を受け止めるに足り得る半身だ」
    涙の鏡に映る自身の顔が、微かに笑みで歪んでいるように見えた。
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