Mojito o Gimlet 複雑に入り組んだ薄暗い路地を抜けると、ぽっかりと空いた明るい場所に出る。建物と建物に挟まれた、何にもならないがゆえに放置されている、まさに猫の額ほどの土地だ。赤いレンガ壁は蔦に覆われ、いたるところに実のなる木や便利な合法ハーブが咲いている。白いベンチとテーブルまで置かれており、パラソルまで用意されているが、今は閉じられていた。硝煙と魔リファナの匂いしかしないこの街の中では、ファンタジックなほどの異世界感がある。
ベンチの影、ライムの木の前で、随分と大柄な男が頭を抱えてうずくまっていた。
強い風でも吹いたのだろう。小さな白い花が、限界まで丸まった背中に散っている。白銀の髪を掴む指は震え、太い腕で顔は隠れているが、うめき声まで聞こえた。
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