好きなのは、同じ ふたりで居るときに、ふと思い立って、何も言わずにサギョウに抱きついてみる。
するとサギョウは俺を抱き返してくれる、同じように何も言わずに。
俺はそれが堪らなく安心する。
だからしばしばそうして甘えてしまっていた、サギョウも同じように、安らいでくれているのだろうと思っていたから。
それなのに。
あるときまた抱きついて、慣れた匂いと温もりに溺れて、我知らずのうちに
「安心する」
と呟いたときに、
「そうですか、僕はむしろ逆で、いつも緊張してますけどね」
と返されて、
「は」
と声を荒げてしまった。
咄嗟に身体を離して見つめた瞳は、いつもと何ら変わりなく見える、気怠そうな半眼。
「そうだった、のか?」
「そうですけど?」
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