微睡み春なのに少しひんやりとしている。
寝起きの身体から熱を逃さないために、毛が逆立って温もりを守ろうとする。両腕を擦ると少し温まった。
床は冷たく爪先立ちで廊下を歩く。
キッチンから漂う香ばしい香りに釣られてリビングのドアを開けた。そこには目玉焼きとベーコンを焼く降谷の姿があった。
「おはよう」
「…おはよう」
ニッコリと笑う顔が元気すぎて、昨日帰ってきたのは深夜を回っていたはずだ。
「あんまり寝てないんじゃないの?」
「ご心配なく。これでも二時間は眠れた」
「それ、適正な睡眠時間じゃないんだけど…」
「ショートスリーパーだから大丈夫」
大丈夫な訳ないじゃない…と思いつつ疲れを感じさせない降谷に志保はため息をついた。
テーブルの上にはトマトが入ったサラダに空の白いお皿、牛乳が並べられていた。
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