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    sasasayyyo0o

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    sasasayyyo0o

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    任務による事故で呪専時代に戻った五と七が、もう一度ふたりの夏をやり直すお話。
    #五七版夏祭り企画 参加作品。連載中で全てのお題を使用予定。

    使用お題:追いかけっこ、天気雨、海

    あの夏の日の君を識る(仮題) 1「七海、そっち」
    「分かっています!!」
     五条の声に、七海は大声で返した。瞬時に身を低くすると、頭上を呪霊が駆け抜けていく。危なかった。背後への意識は回していない。前へ、ただ攻撃することしか考えていない。しかし、五条が同行しているのだから必ず避けられるという確信があった。振り返りざま鉈を一閃。対象は海の藻屑へと消えていく。
     七海は基本的に、自身より低い等級の術師と任務にあたることが多かった。一級呪術師、五本の指で数えられるほどしかいない特級呪術師に次ぐ力を持っているのだから当然だ。そんなとき七海は、いつも彼らを導く側にあった。危険があれば自ら取り除き、成長につながると判断すれば任せながら見守る。それは七海の性にあっていたけれど、時にはこうやって、何も考えずに呪霊に向かっていきたかった。だって七海はそのために、そのことに生きる意義を見出して、ここに戻ってきたのだから。五条がフォローしてくれるから、七海は無心で呪霊に向かうだけでいい。五条とともに行く任務でだけ、七海は自由であれた。
    「南西の方角にまだ一体いるね。攻撃してくる様子はないし、そのままでもいいけど」
    「いってきます」
    「あぁあぁ、やりすぎないようにね」
     間髪入れずに飛び出した七海の背中を、五条も追った。彼が楽しんでいるのだろうことは、言動の端端から分かった。少し持ち上がった唇、細められた目、軽やかな足取りに彼にしては荒っぽい言葉遣いや所作。効率を重視し、最低限の労力で最大の成果を上げることを重視する普段の七海なら、五条の提案に乗っていたはずだった。今日の彼は五条をおいて、まっしぐらに呪霊へ向かっていく。なんだかつまらなくなり、五条はあえて声を出してため息をついた。聞いている者はいない。五条の足は変わらずトップスピードで駆けているから、もし近くに人がいたとしても、聞き取ることはできなかっただろう。五条が自身を納得させるためだけのため息だった。夕方にもなると、人影は減っていた。海の家も更衣室ももう閉まっている。子連れの家族は既に帰った頃合いだろう。カップルたちが砂浜で声をあげて笑っていたり、波打ち際に足を遊ばせているくらいだ。もしこれが任務でなかったなら、楽しい海岸デートになったはずなのに。嫌味なほど光を跳ねて、透き通る翡翠の海に思う。否、任務でなかったなら二人はこんな場所に来ないし、この任務がないならば他の任務にあてられていただろうから、考えても詮無い話ではあるのだけれど。全力で走る七海に追いつくため、五条は無下限を断続的に利用して速度を増しているというのに、一向にその距離が縮む気配はない。五条と違って七海は術式を利用せず、自身の肉体の能力のみで走っているから、相当の負荷がかかっているはずだ。そこまでして追うような獲物でない。むしろ、悪事を働かず人から逃げてくれるというならばそうさせておけばいいのに。夏の暑いなかジャケットをまとって、よくあれだけ動けるものだ。彼自身ハイになっているのだろう。いい加減止めてやろうか、そう思った瞬間、異変は起こった。
    「っ、ぇ」
     漏れるような息を溢して、七海は不意に立ち止まる。追っていた呪霊の消滅により、追いかけっこは唐突に終わりを告げた。
    「はっ、はぁっ、え、五条さん」
    「うん、消えたね」
    「本当に…?」
     呪術師が祓うことによって呪霊が消滅したり、呪霊自体に呪う理由がなくなって消滅するということは往々にしてあるが、なんの脈絡もなく消失することは見たことがない。残穢すら感じられない周囲を訝しむ七海に、五条も頷いた。
    「逃げたか、変異したかだな」
    「どちらに?」
     未だ五条の前方にいる七海は、五条が指示を出すのを待っている。自分より五条の方が優れた眼を持っていると理解しているからだ。五条が東と言えば東に、西と言えば西に駆けるだろう。それだけの信頼を置かれていることを、うれしく思うと同時にそら恐ろしく感じた。だって七海は、五条が地獄への道を示したとしても、躊躇いなく走り出してしまうのだろうから。フーッ、と息をついて、七海は未だ戦闘時の構えを緩めない。既に呼吸は整っていて、いつでも次に向かえると言いたげだ。流れた汗が首を伝って、シャツの襟の色味を変えていた。手の甲で雫を乱暴に拭う姿に、思わず五条は息を呑む。祓う対象に指定されていた呪霊の討伐は済んでいたから、二人の任務は事実上終わっている。五条は油断しきっていた。普段は済ました顔をしながら、それでいてきちんと身なりに気を遣って五条に会いに来る七海の珍しい姿に、五条は微かに興奮していた。
    「さぁ?ぱっと見た感じ見当たらないし、そのままにしておいたらいいんじゃない」
    「突然消えるなんて、可笑しいでしょう。もう少し調べさせてください。万が一、新種の特級だったら、どうするんですか」
    「攻撃してこなかったし放っておいたらいい。特級呪霊のなかにも危険度が低いから泳がせてるやつがたくさんいることは、七海だって知ってるでしょ」
    「ですが」
    「あそこまで追わなくたってよかったくらいさ。まぁ汗に濡れた七海を見るってのも、なかなかない機会だから感謝しとくよ」
    「冗談言わないでください、ぶん殴りますよ」
    「それはそれでご褒美じゃん」
     ようやくいつも通りの七海に戻った気がして、五条は満足げに笑った。七海はときに、熱中すると周りが見えなくなる時がある。他の人間から七海のそんな様子を聞いたことはないから、それは七海が五条に気を許している証拠なのだろうけれど、その危なっかしさにいつも気を揉んでいた。同時に、そんな五条しか知らない、七海の姿が愛おしかった。ジャケットの内ポケットからハンカチを取り出して汗を拭う七海は、すっかりいつもの彼だった。波の打つ音が響くなか、少し俯いている七海はひどく扇情的だった。そのまま捕まえて連れ去ってしまいたい。
     冗談を言っていたから、水の跳ねる音に反応するのが遅れた。それは、水滴のぶつかった七海自身も同様だった。
    「七海、それ」
     拭っても拭っても滴る雫を不審に思ったのか、七海は手を下ろした。米神を伝った水滴が、顎から地面へと落ちる。次々と流れるそれは、汗というには量が多い。夕方、すべてが淡い色彩のなか、透明な雫はまるで宝石のようで、異常すぎる事態への警戒心を薄れさせた。
    「なんですか」
    「すごい濡れてる」
    「えぇ、それは分かってます。…あ、雨」
     水の出所を探して天を仰いだ七海の頬へ、またぽつりぽつりと水滴が触れ、流れ落ちていった。
    「こんなに晴れているのに。天気雨ですね」
    「僕はまだ感じてないけど」
     五条のもとへは未だ一滴の雫も触れていない。七海の髪や額、頬には、大きな雨粒が触れては流れているというのに。美しく幻想的で、それでいて異様な光景だ。七海は僅かに眉を寄せた。
    「え?そんなわけ、」
     声は最後まで聞こえなかった。遮るように、激しい雨が七海に降り注ぐ。目の前にいるはずの五条にも視認できないくらいの雨足だ。七海の周囲を除けば、あたりは穏やかな夕景色を形作っている。歪な空間が広がっていた。五条の眼前に見えるのは滝のように降り注ぐただの水流だけれど、頭上は。
    「七海、上!」
    「    」
     彼は何か返事をしていたようだったが、雨音にかき消された。呪力の籠った雨雲が、七海の頭上にだけ群れをなしている。そこから降り注ぐ土砂降りの雨に、七海の姿が隠されていた。ただの雨粒のように見えていた雫は、砂浜に触れ、今度は呪力を持った蒸気として立ち上っていく。七海を包むように呪力が充満して、現状の把握を困難にさせた。
    「いったん逃げるぞ」
     七海に向かって、五条はそう促した。けれど彼のいた場所に降り続く雫は止まず、雨のカーテンは変わらずに七海の姿を隠している。彼は動いていない、あるいは、動くことができていない。五条が逃げるように指示を出したのに。七海なら、必ず従うはずなのに。ならば五条の視認できないくらいの雨のなか、彼は危険な状態になっているのだろうか。六眼は、その局所的すぎる雨のなかに七海の気配が変わらずあることを教えてくれていたけれど、彼がどのような状態であるかまでは分からない。初めての事態に、五条は不安に駆られた。反射的に指を掲げて、呪力を纏った雲を指す。
    「術式順転、蒼」
     五条の言葉通り、空間は収束する。しかし雲が消失するまでには行かなかった。むしろ水蒸気が集まり、より深い雲となりより強い雨を生む。
    「…チッ」
     最近は控えていた舌打ちが、静かな海岸に響いた。いつの間にか、あたりには人ひとりいなくなっていた。こんな光景を見たら大騒ぎになっただろうに。呪力を孕んでいるとはいえ、実態のない水蒸気を祓おうとすること自体、無理がある。それこそ雲を掴むような話だ。五条は躊躇わず、大雨の降る空間に手を差し入れた。びちびちと腕に跳ねる雫は痛いくらいだった。その渦中にいる七海には、如何程だろう。探れば、暖かい温度に触れた。それが七海のものだということは、何度も握ったから知っていた。それをこちら側に引き戻そうとして。
    「え、あ、ちょ!!」
     七海の身体が沈んでいく。自然と、七海の腕を握った五条も強い力で引き摺り込まれた。動揺の声をあげながら、七海の腕を離すつもりは毛頭なかった。異様だったけれど、敵意はないから、まぁいいか。五条は大いなる力に逆らわず、そのまま幕のように降り頻る雨のなか、吸い込まれていった。


     さっきまでが嘘のように、からりと晴れた空が視界に広がった。
    「ん、う」
     呻き声に似た声がして、五条は慌てて身を起こす。そうして自分が横になっていたことを知った。
    「七海!」
    「五条、さん」
     聞き慣れた、けれどしばらく聞いていないはずの、やや高めの掠れた声。視覚した情報を認識するには、少しの時間が必要だった。
    「…七海?」
    「あなた、なんで高専の制服着てるんですか」
    「いやいやいや、それはこっちのセリフなんだけど」
     何度か目を擦る。髪の毛も顔もぐっしょりと濡れているから、さっきまでの雨は現実だったのかもしれない。いや、でも、服も身体もからりと乾いて、懐かしい制服を着ている。これは夢か現か幻か。
    「…これは、つまり」
    「うん、だいたい七海の予想通りだと思うから言ってごらん」
    「私もあなたも、学生時代の姿になっている、と」
    「そうだね。七海の見た目、呪力の流れを見るにまず間違いない。僕自身も、ね」
    「先ほどの呪霊の影響ですね」
    「十中八九そうだろうな」
    「やっぱり面倒なことになったじゃないですか。だからあの時、もう少し調査するべきだって言ったのに」
    「してたところでどうせ同じ目に遭ってただろ」
     幻覚の類か、あるいは夢か、身体だけ退行したのか、それとも学生時代の肉体に意識だけ入り込んだのか。五条と七海を取り込んだ呪霊の能力も分からなければ、その強さも分からない。攻撃の意思があるのかすら分からない。五条の見立てでは、呪力自体は強くないけれど、蒸気として空気中に広がり変質する力は他に類を見ないものだった。どちらにせよ情報が少なすぎる。それに、巻き込まれてしまったものはもう仕方がない。五条は頭を振ると軽く髪から水気を払った。
    「どうすっかな」
    「そうですね。携帯もなければ財布もありません」
    「飛べんのかな、この僕」
    「今の五条さんが正確に何歳の頃なのかは分かりませんが、無理はしない方がいいかと」
    「なに、心配してくれてんの」
    「いえ。ただ、多少の責任は感じているだけです」
    「いいっていいって、かわいい後輩の我儘だろ」
     いつものように七海の髪を撫でると、長い金糸が指に絡まった。水滴が散る。先ほどまでの汗に濡れた彼よりももっとずっと濡れているのに、沸き立つような色気は感じられなかった。どちらかというと水に溶けて消えてしまいそうな儚さがある。もう少し乾くようにと髪を遊ばせていたら、するりと逃げられた。いつまでも海岸にいても何も始まらない。とりあえず町の方へ足を向けると、七海が後ろからついてきた。
    「とりあえず高専を目指しましょう。対策を考えるにも検査を受けるにも、その方がいい」
    「携帯も財布もないけどね」
    「あっ」
     自分の言葉を今更思い出したのか、七海はあからさまに焦った顔をした。補助監督を呼ぶにも連絡手段がないし、電車にも乗ることができない。この場所が、五条と七海が任務に来た場所と相違ないのなら、高専からの距離はかなりある。五条はわざとらしく拳を作って空を見た。さっきまで夕方だったのに、いま目の間に広がる真昼の日差しは嫌味なほど暑い。
    「よーし、五条さんがなんとかしてやるよ」
    「なんなんですか、急に」
    「こういう時、顔パスって便利なんだって。五条の関係のとこ行ったら助けてもらえるでしょ。初めて家に感謝したわ」
    「でも、私たち、学生の頃の格好ですけど」
    「見てみ」
     五条はつい、と看板を差した。海の家には、今年の海開きの告知がでかでかと記されている。気付けば海水浴に来たのだろう観光客が周囲にいたから、営業は始まっているのだろう。じりじりと暑い日差しは、今が夏の真中だと教えてくれる。記された数字は、十年以上前の西暦だった。
    「…これ」
     驚いたのだろう、立ち尽くした七海を見て、五条も足を止めた。予想の範疇だったから五条は驚かなかったけれど、七海は自身の身体が幼くなったとばかり考えていたのだろう。
    「私、学生のうちに五条さんと二人で海に行ったこと、ないですよね」
    「ないね。だからこれは存在しない記憶、所謂平行世界の僕たちの肉体だと仮定してる」
    「夢である可能性は?」
    「それはもちろん捨てきれない。もう少し調べないと分かんないけどね」
    「そうですね」
     呆然と言葉少なに返す七海の背中を、五条は軽く叩いた。
    「ま、腹が減っては戦ができぬって言うじゃん?とりあえず飯食って寝て考えようぜ!」
    「ですが」
     神妙な顔をして七海は口を開いた。見た目は幼いまだ未熟だった頃の七海の姿なのに、思考や口にする言葉は大人のそれなのだから、なんだかおかしかった。
    「五条悟という存在がいなかったはずの世界であることも考えられませんか?そうであったら、頼れる場所なんて」
    「それは、大丈夫」
     五条は笑った。雨に飲まれた時に纏っていたはずの目隠しは失って、今は目隠しよりも視認性の高いサングラスをかけている。それなのに、頭に入ってくる情報量は減っていた。術式や六眼を持っていることは変わっていないが、今五条が動かしているのはずっと未完成の身体だった。この肉体が十年以上前の己のものであることは、五条は体感としても視覚としても理解していた。
    「高専の頃のものとはいえ、この身体は間違いなく僕のものだ。こんな術式に六眼を持っている人間が存在したら、間違いなく上の奴らは黙ってない。僕が何処の馬の骨であろうと、困っていると言ったら喜んで助けてくれると思うよ。それに何より、」
     確信を持って、五条は言った。
    「お前はこの世界でも七海建人だし、僕は五条悟だ。それだけは変わらない。そうだろ」
     五条の言葉に七海は少し瞳を揺らして、睫毛を伏せるとそっと頷いた。彼のざわめいていた呪力が落ち着いていくのが分かる。普段なら論理的破綻を指摘されそうなところだが、今の彼が動揺していたことが幸いした。安堵の色を滲ませた七海に努めて笑顔を向けて、五条は懇意にしている近場の旅館を頭のなかで挙げていく。今はまだ、知らせなくていい。五条にしか視えないものだ。七海が納得して安心するなら、それでいい。
    「歩いて十五分くらいかかるけど、行ける?」
    「平気です」
    「ん」
     なんだかまだ所在なさげな七海の手首を、五条は滑らかな所作でつかんだ。驚いたのか、彼が顔を上げるのが分かったけれど、そのままに歩き出す。今の見た目なら、学生二人、かわいらしい戯れにしか見えないだろう。七海の肌はひやりとしていた。彼の体温が高めだったのは、大人になって身体を鍛え、代謝をよくしたからだったのかもしれない。おかしなことばかりなのに、胸を高鳴らせている自分を五条は否定しなかった。これは、七海と過ごす何回目かの夏で、ふたりきりで過ごすはじめての夏だ。夢だとしても構わない。そうならば、とびきり幸せな夢だ。五条は鼻唄を歌い出しそうなほどの足取りで、七海の手を引いた。
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    DONE任務による事故で呪専時代に戻った五と七が、もう一度ふたりの夏をやり直すお話。
    #五七版夏祭り企画 参加作品。連載中で全てのお題を使用予定。

    使用お題:追いかけっこ、天気雨、海
    あの夏の日の君を識る(仮題) 1「七海、そっち」
    「分かっています!!」
     五条の声に、七海は大声で返した。瞬時に身を低くすると、頭上を呪霊が駆け抜けていく。危なかった。背後への意識は回していない。前へ、ただ攻撃することしか考えていない。しかし、五条が同行しているのだから必ず避けられるという確信があった。振り返りざま鉈を一閃。対象は海の藻屑へと消えていく。
     七海は基本的に、自身より低い等級の術師と任務にあたることが多かった。一級呪術師、五本の指で数えられるほどしかいない特級呪術師に次ぐ力を持っているのだから当然だ。そんなとき七海は、いつも彼らを導く側にあった。危険があれば自ら取り除き、成長につながると判断すれば任せながら見守る。それは七海の性にあっていたけれど、時にはこうやって、何も考えずに呪霊に向かっていきたかった。だって七海はそのために、そのことに生きる意義を見出して、ここに戻ってきたのだから。五条がフォローしてくれるから、七海は無心で呪霊に向かうだけでいい。五条とともに行く任務でだけ、七海は自由であれた。
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    あの夏の日の君を識る(仮題) 1「七海、そっち」
    「分かっています!!」
     五条の声に、七海は大声で返した。瞬時に身を低くすると、頭上を呪霊が駆け抜けていく。危なかった。背後への意識は回していない。前へ、ただ攻撃することしか考えていない。しかし、五条が同行しているのだから必ず避けられるという確信があった。振り返りざま鉈を一閃。対象は海の藻屑へと消えていく。
     七海は基本的に、自身より低い等級の術師と任務にあたることが多かった。一級呪術師、五本の指で数えられるほどしかいない特級呪術師に次ぐ力を持っているのだから当然だ。そんなとき七海は、いつも彼らを導く側にあった。危険があれば自ら取り除き、成長につながると判断すれば任せながら見守る。それは七海の性にあっていたけれど、時にはこうやって、何も考えずに呪霊に向かっていきたかった。だって七海はそのために、そのことに生きる意義を見出して、ここに戻ってきたのだから。五条がフォローしてくれるから、七海は無心で呪霊に向かうだけでいい。五条とともに行く任務でだけ、七海は自由であれた。
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     七海は基本的に、自身より低い等級の術師と任務にあたることが多かった。一級呪術師、五本の指で数えられるほどしかいない特級呪術師に次ぐ力を持っているのだから当然だ。そんなとき七海は、いつも彼らを導く側にあった。危険があれば自ら取り除き、成長につながると判断すれば任せながら見守る。それは七海の性にあっていたけれど、時にはこうやって、何も考えずに呪霊に向かっていきたかった。だって七海はそのために、そのことに生きる意義を見出して、ここに戻ってきたのだから。五条がフォローしてくれるから、七海は無心で呪霊に向かうだけでいい。五条とともに行く任務でだけ、七海は自由であれた。
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