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    amei_ns

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    がんばるトールと知らない呂布の雷飛

    #雷飛
    leiFei

     トールは、これまで人を愛したことがなかった。初めてだ。初めて、他者を愛しいと感じた。慈しみ、愛でたいと思った。しかし、そう思った相手というのが問題だ。その相手というのは、呂布奉先。ラグナロク一回戦を戦った人間である。そう、人間なのだ。
     神と人間。そのロマンスの話は数多くあれど、ほとんどが人間の側の創作であり、事実ではない。人間たちの間で、ゼウスなど恋多き神として知られているが、なにが、なにが。実際のゼウスは戦闘変態嗜虐愛好神である。いつ見てもすごいなこの言葉の圧。
     実際の神は人間など歯牙にかけないものが多く、トールの恋は多難であった。けれどトールは諦める気などさらさらなかった。数多の困難をその力で打ち砕き、解決してきたトールにとって、この程度のことなど乗り越えられないはずがないと思っていた。トールは口が上手くないから、まず口達者な神を自らの協力者にした。その者は初めから協力的だったのでよかった。そこからじわじわと手を広げ、トールが人間に恋をしているという話を固めた。事実そうなのだからしかたがない。ときには反対派を見せしめにしたりしつつ、浮遊層を懐柔し、人間との恋を是とさせていった。その話が充分に広まったとき、トールはオーディンに呼び出しを受けた。直々の呼び出しなど久々であったが、トールにはその理由がわかっていた。一番強固に反対を示し、越えるべき難関というものがあるならばそれはオーディンであろうことが、トールにはわかっていた。
     だから、トールは気を引き締めてかかった。

    「と、いうわけで貴様を迎え入れることができそうだ」
     死合いのおり、トールは呂布にそう告げた。難敵だったオーディンも説き伏せ、ロキもなんとか力で解決したトールであった。それはもう晴れやかに呂布に伝えたのであるが、伝えられた方の呂布は微妙な顔をしている。
    「なぁ、トールよ」
    「なんだ?」
    「……そもそもお前は我が好きだったのか?」
     その台詞でトールははた、と気がついた。
     ――神への対応に追われていたせいで当の呂布に告白するのを忘れていたのだ。
     しかしそこは北欧最強神のトールである。内心では狼狽えていたが、堂々としたものだった。
    「ああ、そうだ。私は貴様が好きだ」
     開き直りとも言えるそれに呂布は「そうか……」と苦笑いをこぼした。呂布の方も、憎からずトールのことを好いていたので、告白を受けようという気になっていたのが、トールにとって幸いであった。
     そんなこんながあって、トールと呂布はいわゆる交際に発展することができたのだが……。なんというか、神たちからの視線が痛く、呂布は落ち着かない気持ちになった。
    「トール、お前どうやって神たちを説き伏せた?」
    「さて、な」
     ごまかすトールに、呂布はさらに突っ込んで尋ねることを諦めた。長くない付き合いの中だが、トールが一旦決めたことは突き通す主義だと知っていた。どうせ碌でもないことをしたのだろう、と呂布は思ったし、実際そうだったのだが、それを知っているのは神ばかりであった。
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    DOODLEキスが好きなトールとキスをされる呂布の雷飛 トールはくちづけをするのが好きらしい、と呂布は気がついた。むやみやたらと呂布の体に唇を落としたがるし、その唇が触れるときには自然と口角が上がっている。そのくせ、痕という痕はつけてこない。まあ、呂布の普段の格好が格好だからかもしれないが。それが気遣いであるとするなら、素直に受け取っておくのである。下手につついて、蛇を出すこともあるまい。
     唇が合わさる。普通なら目を瞑るのかもしれないが、トールも呂布も普通ではなかったので、目を開いたままだ。視線がカチ合ったまま、キスをする。トールの舌が催促するように呂布の唇を舐めると、呂布は口を開き、トールの舌を受け入れた。口内を蹂躙しようとしてくる舌に対し、呂布は応戦する。二人にとって、キスもまた戦いであった。どちらの勝ちというものもないが、相手を負かすことを考えているのであれば、それは戦いとなる。
    「っ、ふ……ぁ」
     呂布の口から吐息が漏れ、それはトールの耳に届いた。官能を刺激する、いい音だった。ぬる、と舌同士が絡み合い、くちゅりと音を立てる。始めの頃はそう、軟体生物のようなそれを受け入れるのは苦手な部類だったが、いまはそうでもない。むしろ心地がい 1381

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    DOODLE行為のとき首に噛み付こうとしてくる呂布を肩に誘導するトールの雷飛。いろいろあった。そう、いろいろあった、のである。
     その結果、トールと呂布は、いわゆるそういうことをする仲になっていた。この話は二人が寝所を共にしているところから始まる。

     首とは急所である。それは人も神も同じだ。否、神にとって弱点であるから、神を模して作られた人間もそうなっているのだ、と言わなければならないだろうか。首は頭部と胴体を繋ぐ関節であり、また太い血管の流れる箇所である。そこに食いつかれようとするならば、危機を感じ、避けようとするのが普通の心情であろう。
     それは、北欧最強神であるトールもそうであった。首に食らいついてこようとする友の額を押さえそれを阻止する。
    「噛むなら肩にしろ」
     押さえた頭をそっと肩の方に誘導すると、呂布はおとなしく肩に齧り付いた。呂布の鋭い歯で噛まれたことにより、痛みが走るがその程度で表情を歪めるトールではない。がじがじと肩に歯型を付ける呂布に、ほどほどにしておけなどという言葉をかけようかと思ったが、やめた。どうせもう聞こえてはいないだろうことがわかったからだ。
     意識が朦朧とする中でもしっかりとトールに掴まり、肩に齧り付きながらも時折口を離し喘ぎ声 1774

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    DOODLEキスをする二人の雷飛 トールの不思議な色をした目が間近にあるというのは、どうにも慣れない。普通キスをするときには目を瞑るものだろうが、普通ではないトールと普通ではない呂布がそれを行うときには、互いに目を閉じたりしない。気恥ずかしくなった方が負けなのである。相手をガン見しながらのキスは、それは落ち着かないものがあるがしかたがない、と呂布は思っている。
     なぜか、どういう訳か、なにがあったというのか、そういう仲になった二人である。トールは案外甘えたなところがあったが、甘えるのが下手な上に相手は呂布なので、変な方向に転がることが多々あった。キスの時のこの所作もその一端である。二人にかかるとなんでも戦いになってしまうのは――そういう性分である。生きづらいのはお互い様であった。
     ちゅむ、ちゅ、ちゅむ、と角度を変えては軽く押し付けられていた唇が、次第に大胆に呂布の呼吸を奪うような、荒々しいものに変化していく。吐息すらも逃がさないとばかりに、はく、と口を大きく開き呂布の唇を閉じ込める。
     トールの口から伸びてきた舌が唇を擽れば、呂布は口を開かざるを得なくなる。侵入してきた舌は呂布の特徴的な尖った歯を一本一本丁寧に愛撫 1706

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    DOODLE子猫にじゃれつかれるトールを見てる呂布の雷飛「助けてくれ」
     トールが助けを求めるなど、どんな天変地異があってもないことだと思っていた。けれど、それは有り得たらしい。トールからの連絡があり駆けつけた呂布は、その光景を目の当たりにし、驚愕で目を見開いた。
    「お前、なにをしているんだ……?」
     トールは子猫に群がられていた。数は、五匹くらいだろうか。ぴゃう、ぴゃう、などと鳴きながら、小さすぎて恐れというものをまだ知らないのだろう。トールの足元をよじ登っていたり、その足元でころころと転がっていたりと、それぞれに違う反応はしていたもののどれもがトールの傍にいるという点では一致していた。
    「見て分かるだろう」
    「いや、見て分からん。どうした?」
     使用人が邸の傍に捨てられていた箱を持ってきたら入っていた、というのである。
    「私を恐れない生き物など初めてだ……」
     はぁ、と溜め息をつくトールの揺れる髪の毛にちょいちょいと手を出している子猫もいた。
    「お前のことだから捻り潰していても不思議ではなかったが」
    「こんなもの、殺したとてどうなる」
     呂布が近付き、一匹をひょいと拾い上げる。シャーとも言わない、警戒心というものすらまだないのではあるま 1199

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    DOODLE神トールと悩む呂布の雷飛 鉄の手套をしていないトールの握力は凶器である。通常時のミョルニルですら握り壊してしまう可能性のあるそれは、紛れもなく殺戮兵器の域に達している。しかし、最近のトールは呂布と素手で触れ合いたいがため、呂布の前では鉄の手套を外すことが多くなっていた。――今回はそれがあだとなった。
     ミシッ、と軋む音がしたと思ったときには、すでに遅く。トールに掴まれた呂布の腕は粉砕されていた。咄嗟のことだったので、トールも力加減を間違えていた。何が起こったのか理解するよりも先に、握り壊された呂布の腕の折れた骨が刺さった血管から、鮮血が溢れ出てトールの手を、落ちた血が床を、汚した。トールが手を離せば、血はどんどんと溢れて、落ちる。呂布には当然痛みはあったが、うめき声一つあげることなく、半ば引きちぎれた腕を完全に引きちぎり、邪魔になった腕を放り投げると、傷を残った手で押さえた。少しでも血の流出を抑えるためだ。
    「布はないか」
     呂布の声で唖然としていたトールはハッとして自らの着ていたものの一部を破り、呂布に渡した。呂布はそれを片腕で器用に流血している箇所に巻きつけ、止血をする。それはどちらかといえばこれ以上床を 1906

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    DOODLE気づいてしまったトールと断る呂布の雷飛「私は、貴様が好き……なのかもしれん」
     トールから捻り出された言葉は、呂布を唖然とさせるには充分だった。ぽろ、と肉がこぼれ落ちたのを下につくまでに拾い上げることになんとか成功した呂布は、それを口に放り込みもぐもぐと噛み締めてからごくりと飲み込んだ。
    「なんだ、それは。どういうことだ」
    「そのままの意味だ。私は、お前が好きなのかもしれん」
     トールはもう一度言った。一度言ったからか、次には絞り出すようにではなく随分とスムーズに言葉に出していた。
    「それはどういった意味の好きだ?」
    「……愛おしいと思ったり、慈しみたいという気がしたりする、それだ」
     呂布はうっかり杯を取り落とすかと思った。トールから愛おしいだの慈しみたいだのという言葉がでてきたことに驚いたが、それ以上にそう言われているのが自分であることに、驚愕したのであった。
    「待て。相手は誰だ? 本当に我か?」
    「ああ。貴様だ」
     肯定されて、呂布は頭痛がしてきた。まさか自分が? という気持ちでいっぱいであった。しかもそれが友と認めた、友だと思っている、友として扱っているし、向こうも友として扱ってきているはずの、トールから言われてい 1659

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    DOODLE自分の感情に悩むトールとめんどくさがる呂布の雷飛愛、という言葉は、二人の間にはあまりにも似合わないものだ。だから、決してこれは愛ではない、とトールは定義していた。わかっていた。わかっている。わかって、しまっている。これは愛などではないと。愛と呼べるほど甘やかではなく、激しく、燃えるように、苛烈で、暴力的な、それは愛などでは決してないのだと、そう、理解しているはずだった。
     けれど呂布を見るたびに、感じるたびに、思い返すたびに、弾ける胸の内を表せる言葉を、トールは知らなかった。友に向けるには凄絶過ぎるそれを、どう定義していいのか。その問題は詩情を理解したことがないトールには難しすぎた。
     この胸の内を、どう表していいのか。困って、困って、困って。
    「それで我に尋ねてどうするんだ」
     トールよりも詩情というものを理解しないであろう友、呂布本人に尋ねるまでに至った。
     呂布は此奴混迷し過ぎだろう、という感想を持った。それでもこの頃には聞くだけは聞いて放置というわけには行かず、一緒に考えてやる程度にはトールのことを突き放せなくなっていた。
    「激情ではダメなのか」
    「ダメだ。もっと好意的な解釈がしたい」
    「慈しみ」
    「そうではない。これはそこ 1222

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    MOURNING今書いてるやつで気に入らなくなって没にした展開の雷飛「貴様が了承したのであろう」
    「なにをだ」
    「……まさか覚えてないのか」
     呂布が頷くと、トールは目を見開いた。
    「ばかな……」
     そう呟くトールの様子を見て、自分が忘れたことはそんなに重要なことだったのだろうか、と思い冷や汗が背中を流れた。
    「教えろ、トール。我はなにを了承した」
     自分が昨日なにをしたか知るのはトールしかいない。今にも熊などを捻り殺しそうな剣幕で、呂布はトールに尋ねた。
    「貴様はな、呂布よ」
     トールは重々しく口を開いた。

    「私と婚約することを、了承したのだ」

     沈黙。

    「は?」

     こんやく。こんやく、とはあの婚約か? 宇宙に放り出されなにもできない猫のような顔をする呂布に、トールは続けて言った。
    「今朝、父、オーディンからも貴様と婚約していいという許しを得た。貴様と私は晴れて婚約者というわけだな」
     唇の端を少し上げ、微笑むトールに、呂布はまだ宇宙に放り出されたままのような顔をしていた。今朝ということはそう何時間も経っていないはずである。それなのにあのオーディンから許しを得たということはトールの仕事は早かったということで、混乱したままの呂布はせっかく整えら 631

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    DOODLE呂布に死んで欲しくないってしたトールと対応に追われた呂布の雷飛「貴様は、天でも、退屈したら死ぬのか?」
    「まさか。ここにはトール、お前がいるではないか。それだけで、我の日々は退屈からは程遠い」
     トールは眉間に皺を寄せたままその言葉を受けた。呂布の言葉に懐疑的なのはそれだけでわかった。面倒だな、と思いながら呂布は頭を掻いた。なにかの拍子に生前の呂布について見てしまったトールは、呂布が目の前から消えることを恐るようになった。なるべく目の届く範囲にいてほしい、と友に願われた呂布はしかたなしにそれに付き合っていたが、陳宮が近況を送ってくる頻度が高くなり、また赤兎馬の様子も気になっていた。そのため、この状況を打破しなくてはならないな、と思っていたところだった。
     喋るのはあまり得意ではない。全てを解決してきたのは武、であったから。言葉などは不要だった。武以外のことは陳宮やほかの配下に任せてきたこともあり、不得意であった。いくら頭を悩ませたところで武器を取る、以外の答えが見当たらない。顔を曇らせる友に、慰めの一言すらでてこない。体を動かすのは自由であった。軽い手合わせなら何度もした。呂布はどうすればいいのかと考える。…………。ちっともわからなかった。
     呂 1238

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