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    秀二🐻‍❄️

    ヘキの墓場🪦
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    幽霊鯉がショタ鯉に月を取られます(概念NTR)

    どちらもちゃんと鯉です。
    また可哀想な幽霊で、少しだけ胸糞かもです。お気をつけください。
    ショタ贔屓が過ぎる。

    ランダム単語「空き巣狙い」 目が覚めると私は宙に浮いていた。ついでに身体は半透明で向こうを透かして見ることができる。私は絵に描いたような幽霊であった。

     鏡を見つけ覗き込むと、少尉時分のおのれが映っている。我ながら大往生し、逝く時はどこからどう見ても立派な老人になっていたはずだ。死後は若返るのだろうか?幽霊である以上、肉体的な力も何もないが若い姿は不思議と活力が湧いてくる。
     そういえば、月島もどこかにいるだろうか。私より一回り以上も歳を重ねていたあれは、しかし私と同じくらい長く生きた。月島が死に私もほどなくして往生した記憶がある。同じように霊感として彷徨っているのであれば、どこかで再会できるのではないか。街はすっかり近代化が進み見慣れぬ建物、服装の人間が溢れかえっている。ここがどこかも分からないが、まずは奴を見つけることから。

     野良猫を追いかけたり、街行く人間の会話に耳を傾けたり。怪しげな店に入ってみたり、学校に潜り込んでみたり。あらゆる場所を巡りながら月島を探した。
     どうやらここは東京であるらしいが、街の様子が大きく変わっており人も多すぎる。幽霊であっても見逃してしまうほど、どこに行っても人と物が溢れていた。
     東京だけが日本ではない。北海道やあるいは佐渡にいる可能性もあるのだ。いつまでもこの街にいてもしかたないのかもしれない。私はすっかり気落ちしてしまい風の流れに身を任せ漂っていた。青い空が流れていく。このまま月島がいる場所まで連れて行ってくれればいいのに。気が遠くなっていく。少し眠ろう。こんな身体になってから分かったが、どうやら幽霊も眠るらしかった。

     どれほど流されていたのだろうか。ふと意識を取り戻すと、とある一軒家の屋根に横たわっていた。立派な建物だ。現代の色々な景色を見てきたため、大層な富豪である様子が見てとれた。なんとはなしに屋根から玄関先に降り立つと、ちょうど家の者が帰ってきた。門から賑やかな話し声が聞こえる。

    「今日はいっしょにねてもいい?」
    「どうしましょうかね」
    「なぁん」
    「ちょっと、歩きづらいです」
    「うふふ」

     子供とそれよりは歳を重ねた少年の声に聞こえた。しかし、私にとってはそれだけではない。これは求めていた声だ。そう歓喜すると同時に、本能的に心臓が冷えていくのを感じた。何がおかしい。何か。何かなんて理解はできているのだ。しかし、こんなことは。

    「ほら音之進さん、着きましたから」

     随分と若い姿だが、纏う雰囲気や声音も変わっていない。間違いなく、私の月島。月島が。

    「はじめ、待って」

     月島の隣に私がいた。気が遠くなるほど昔、鏡の中で見た幼い私がそこにいる。歳は十にもなっていないだろうか。両手で月島の手を掴み笑顔でこちらへ歩いてくる。月島は私を見ている。いつか私に向けてくれたあの目で、心底愛おしそうに!

    「……あ」
    「どうしました」

     ふと、私が私を見た。道端に咲く花に気づいた時のような、なんて事はないものを見る目で私を見上げている。月島はこちらに目を向けるが、その瞳に私は映ることができなかった。幼い私はじっと私を見つめ、少年特有の高い声でささめく。

    「もう 遅い」

     そのまま月島の腕を引き、私は扉の向こうへ姿を隠した。
     扉越しにいつかの私と月島の声が聞こえた。水っぽく、いやしい音が鼓膜に飛び込み私を切り裂く。それは幻覚か現実のものか、もう私には分からなかった。
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