Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    w_a_d_o

    遊修ぽいぽい

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 19

    related works

    水鳥の

    MOURNING書いたけど、これじゃない、ゆまおさ……にならない。何故? 世界は無情な表情をしてくる時がある。『空閑遊真』、彼はそれを重々にわかっている。

    『オサム』
     いつからだろう、その言葉に甘い響きが重なり始めたのは。それは知らない音になって行く。なのに、彼はその音で、声で名前を呼び続けた。何度も、何度も、何度も。
     世界の流れに置いて行かれるのをわかっているのに、空閑遊真はその選択肢を選んだ。大切なことは何一つ伝えない、という選択を。
     それに気づいたのは、他でもない三雲修だった。
     三雲は空閑に何度も言おうとした。傍にいると、手を握ると。だがそれは空閑が望んだ答えじゃないことを三雲は知っていた。でも今はそれ以外を渡すことはできない。

     朝日が昇るベッドの中、三雲は起き上がり眼鏡をかける。冷たい空気を馴染ませるように吐いた息はため息となって口から出ていく。
     ――空閑。
     伝えなくてはならないのに、伝えられない想いが後悔となって三雲に付き纒う。何度も昼と夜を繰り返して、空閑の望まない答えを伝えようとしても、上手く行かない。終いには、
    『オサム』
     優しい音色で、口の中で転がすように吐き出された言葉に、あの時の三雲は赤面した。心臓が早鐘を打ってい 562

    recommended works

    水鳥の

    MOURNING書いたけど、これじゃない、ゆまおさ……にならない。何故? 世界は無情な表情をしてくる時がある。『空閑遊真』、彼はそれを重々にわかっている。

    『オサム』
     いつからだろう、その言葉に甘い響きが重なり始めたのは。それは知らない音になって行く。なのに、彼はその音で、声で名前を呼び続けた。何度も、何度も、何度も。
     世界の流れに置いて行かれるのをわかっているのに、空閑遊真はその選択肢を選んだ。大切なことは何一つ伝えない、という選択を。
     それに気づいたのは、他でもない三雲修だった。
     三雲は空閑に何度も言おうとした。傍にいると、手を握ると。だがそれは空閑が望んだ答えじゃないことを三雲は知っていた。でも今はそれ以外を渡すことはできない。

     朝日が昇るベッドの中、三雲は起き上がり眼鏡をかける。冷たい空気を馴染ませるように吐いた息はため息となって口から出ていく。
     ――空閑。
     伝えなくてはならないのに、伝えられない想いが後悔となって三雲に付き纒う。何度も昼と夜を繰り返して、空閑の望まない答えを伝えようとしても、上手く行かない。終いには、
    『オサム』
     優しい音色で、口の中で転がすように吐き出された言葉に、あの時の三雲は赤面した。心臓が早鐘を打ってい 562

    zeppei27

    DONE企画4本目、加糖さんよりご指名頂いた黒田で、『分け合いっこ』です。豪快さと可愛さの合わせ技、黒田君はいろんなものを何の気なしに分け合ってくれるような気がします。多分他意はないんだ……あるって言って!
     リクエストありがとうございました!
    太陽の共食い 薩摩藩上屋敷は夏真っ盛りだった。縁側をみっしりと埋め、前庭に敷いた筵一面に広がる夏の成果に、黒田清隆は目を疑った。江戸に来てから久しいが、このような異様な光景に出くわすのは初めてである。
    「西瓜……だと?」
    「その通りだ、黒田」
    朋輩たちがわらわらと興味本位で群がる様に呆然としていると、のっそりと大きな影がさした。いついかなる時も沈着冷静な人は誰であろう、大久保利通である。流石に彼ならば事情を知っているに違いない。こちらの困惑を見て取ったのだろう、利通は淡々と続けた。
    「篤姫様が、暑気払いにと御下賜されたのだ。京の都から取り寄せたらしい。……一人一つだ!欲張るでないぞ!」
    「承知しもした!」
    すかさずちょろまかそうとした輩がいたのだろう、利通の一喝ですぐさま場の空気が引き締まる。確かに、薩摩の暑さに比べれば江戸の夏など可愛らしいものだが、暑いには変わりない。西瓜のみずみずしい甘さは極上に感じられるだろう。篤姫も小粋な計らいをしてくれたものだ。
    3277