Recent Search

    水鳥の

    箱です。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 21

    水鳥の

    MOURNING初のイコプリSS。大半が十九歳。関西弁は空気で読んでください。 付き合ってからと言うもの、王子は事あるごとに生駒に好きを伝えたがる。
    「好きだよ、イコさん」
     時も場所関係なく伝えられる言葉に、生駒は不思議そうに尋ねたことがある。
    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
    1089

    水鳥の

    MOURNING書いたけど、これじゃない、ゆまおさ……にならない。何故? 世界は無情な表情をしてくる時がある。『空閑遊真』、彼はそれを重々にわかっている。

    『オサム』
     いつからだろう、その言葉に甘い響きが重なり始めたのは。それは知らない音になって行く。なのに、彼はその音で、声で名前を呼び続けた。何度も、何度も、何度も。
     世界の流れに置いて行かれるのをわかっているのに、空閑遊真はその選択肢を選んだ。大切なことは何一つ伝えない、という選択を。
     それに気づいたのは、他でもない三雲修だった。
     三雲は空閑に何度も言おうとした。傍にいると、手を握ると。だがそれは空閑が望んだ答えじゃないことを三雲は知っていた。でも今はそれ以外を渡すことはできない。

     朝日が昇るベッドの中、三雲は起き上がり眼鏡をかける。冷たい空気を馴染ませるように吐いた息はため息となって口から出ていく。
     ――空閑。
     伝えなくてはならないのに、伝えられない想いが後悔となって三雲に付き纒う。何度も昼と夜を繰り返して、空閑の望まない答えを伝えようとしても、上手く行かない。終いには、
    『オサム』
     優しい音色で、口の中で転がすように吐き出された言葉に、あの時の三雲は赤面した。心臓が早鐘を打ってい 562