(……寝てる…)
ケイトが魔法薬学の本を片手にいつもの特等席に向かうと珍しい先客がいた。
大きな図書室の片隅、集中するのに最適な小さな一人用机。ここの机だけ他から離れており、ケイトは一人になりたい時よく活用していた。
他の生徒に使われていることも珍しくないのだが、そこにいた人物と、腕を枕に寝ている姿にちょっと目を見開いた。
図書室で調べごとなど拙者には不要、とイデアが自分のダブレットを指差して言ったのはいつの事だっただろうか。事実、彼には端末に加えて優秀な弟がいるため、図書室に来ることはあまりなく、ましてや寝に来る…なんてことも考えられなかった。(そもそも生身がいるのも珍しいことなのだが)
起こさないよう近付いて様子を見る。
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