その青色を僕に移して
前から気になっていたことがある。イデアさんと深い口づけを交わしたら、僕の唇にその青が移ってしまうのだろうか、と。
僕たちは、おそらく今どきの高校生にしては珍しいくらいに清いお付き合いをしている。だから口紅の色が移るような……濃厚な口づけなんて、したことがなかった。
もしそんなことができたら、青に染まった唇に気づかぬふりをしてそのまま寮に帰りたい。ジェイドあたりにお楽しみでしたね、だなんてからかわれるだろうが、しかしそれも僕たちの関係を見せつけられるのなら悪くない。
そのまま自室へ帰って、鏡を見つめてイデアさんを感じたい。唇をなぞって、イデアさんと交わしたであろう溶け合うような口づけを思い出したい。もしかしたら、その日は浮かれて顔を洗えないかもしれない。朝起きたときに青が擦れて消えかかっていることに、物寂しい気持ちになりたい。
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