日不知夜, 月不知昼（前半）　“日蝕軍”が旧高塔国側勢力を鎮圧してから、一週間ほどが経過した。抵抗したり、逃げおおせようとした貴族たちはすでに大勢殺されている。残っているのは、大人しく捕虜になることを申し出た人々のみとなっていた。
　その中でも比較的位の低い者たちの対処は部下に任せ、棟梁たるヘレルはというと位の高い貴族や、官僚などの役職を担う重要人物の尋問にあたっていた。当然合間を縫って、かの“太陽”を捕らえている地下牢へ顔を出すことも忘れない。
　連日のごとく、ヘレルは指定された部屋へ向かった。部下からの情報共有を生返事で返しているために、今回対面する人物の細かい素性を彼は知らない。ただ、旧高塔勢力においてかなり重鎮であったらしいということだけ辛うじて頭に入っていた。