薔薇より赤い 一ノ瀬先生の運転するバスに揺られて会場に辿り着き、控え室でステージ衣装へと着替えてメンバーのみんなと音出しやリハーサルを終えた後のこと。
「朝日奈さん、少しいいかね」
舞台袖で声を掛けてきた篠森先生は、コンサートの主催者がスタオケの代表者と話がしたいそうだと伝えてくれた。
「わかりました。確か篠森先生の学生時代の先輩でしたよね?」
「ああ」
今回の主催者は星奏学院の卒業生で、篠森先生がお世話になった先輩でもあるという。母校の生徒がいる学生オーケストラに興味を持って、オファーをしてくれたのだと前もって聞いていた。
「私以上に厳しい方だ。くれぐれも失礼のないように」
「はいっ!」
そんな厳しい方が興味を示してくれたというのも、きっとステージマネージャーとして篠森先生が上手く話をしてくれたからなんだろう。
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