唇を塞がれる。
彼の、形の良い唇に。
文字通り目と鼻の先にきた、彼の整った顔をまじまじと見つめる。
今は伏せられている琥珀色の瞳も、羨ましいほど長いまつげも、さらりと流れる髪も、彼を彼として形成する、全てのパーツが愛おしい。
そして、永遠に続けばいいと願うほど、この瞬間がたまらなく好き。
私の視線に気付いたのか、ふっと瞼が押し上げられ、まあるい月のような瞳が現れる。
不満そうに、目を閉じろ、と言いたげに。
間近で私だけを映すその綺麗な瞳をもう少し見ていたかったけれど、素直に目を閉じれば、後ろ髪に手を差し込まれる。
ああ、これは、
とびきり甘い口づけに変わる合図だ。
上気した頬、濡れた唇、浅い呼吸。
じっと絡み合う視線に帯びる熱。
その瞳の奥に、確かに燻り始めた炎を見つけ、心臓が高鳴る。
「……ねぇ、」
「……ん?」
「……もう1回、」
「………これ以上は、」
「……だめ?」
「……君、もう止められなくなるだろう…?」
「……それは朔夜だって同じでしょ…?」
「……………帰るのが遅くなる」
「じゃあ、泊まってく」
朔夜の口からこぼれ落ちた溜め息は、呆れよりも諦め。
でも、そこに僅かに混じる吐息が、彼の葛藤を物語る。
「……唯」
甘く切ない声音。
耳元で、その声で、名前を呼ばれれば、ぞくりと腰が震える。
真っ直ぐ見つめてくる、熱に浮かされた瞳から、目が離せない。
そっと伸ばされた長い指が、優しく、懇願するように頬を撫でる。
私は、静かに目を閉じた。