はるかぜとともに「ごめんね雨さん」
目が覚めた時から身体が重い気がして喉に違和感があった。昼前には頭痛と腹痛もやってきて、額に当てられた五月雨江の手のひらがひんやりして気持ち良くて。
薬研曰く風邪とのこと。今日は揃って非番だから一緒に山に季語を探しに行こうと話していたのによりにもよって何故このタイミングなのか。熱でままならぬ身体を布団からようよう起こした村雲江は約束を反故にした申し訳なさで傍らの五月雨江に頭を下げた。
「あったかくなって来たのに風邪ひくなんて……ほんとごめん」
寒い時期ならまだしももう季節は春だ。晴れて暖かい日が続き先週は桜も咲いたというのに。寒さが緩んで油断をしていたのだろうかと村雲江は萎れた気持ちを隠す事も出来ずに俯いた。
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