ハンナの生い立ち① 魔界の人間たちが住む国で生まれる。名前はハンナ。クラーク家に生まれた一人娘であった。
クラーク家といえば、この国では建国当初から続く名家であった。ハンナが生まれた家系はその分家ではあったが、両親はこの街で知らない者はいないというほど、有名な魔導師であった。
しかし両親は、その血筋には縛られず、平凡な幸せを送って欲しいとの願いこめ、この国では珍しくもない、よくある名前を娘につけた。祖父母をはじめ、親戚は口を揃えて、大魔導師だった何代目の名前だとか、かつて魔界大戦で名を馳せた名雄の名だとかをつけろと言ってきたが、ハンナの両親は自らの娘に重すぎる期待をかけるのを嫌った。
そんな両親の願いを知ってか知らずか、ハンナは両親の魔法の才を受け継がなかった。いや、正確には魔力は備えていてもそれを使うことができなかった。
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