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    はるみ

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    はるみ

    DONEたしさんのお誕生日に押し付けた侑北です。
    モブ女が可愛いイッヌに背中を押される侑北を見守る話です🐶
    天使のあしあと すんのかい、せんのかーい!
     関西の血が入っていない私ですら、心の中でそう叫んでしまうほど焦れったい。
     公園を見下ろす場所にある小洒落たカフェ『AT KiTsune』の窓越しに眼下のベンチへ視線を注ぐ私の拳は、小一時間ほど前からずっとギッチギチに握りしめられている。
     燦々と太陽が照っていた日中とは異なり、夕方の気配がし始めたこの時刻。公園の遊歩道から少し離れ、花壇と生垣に囲まれた池のほとりに置かれたベンチは、高校生の放課後デートのロケーションとしては中々いい雰囲気のはず。
     部活帰りなのか、大きなエナメルバッグをベンチの端側に置き、中央に並んで座る制服姿の高校生。先ほどから、金髪の子が隣の銀髪の子の肩に手を伸ばそうとしては引っ込め、というのを百回は見た気がする。きっと、まだ付き合いたての二人なのだろう。座る距離は友人にしては随分と近いのに、どちらも動きがやけにぎこちない。その独特の空気感に恋人同士の蕩けるような甘さは無く、もどかしい程の甘酸っぱさが漂っている。どのくらい甘酸っぱいのかと言えば、のど飴を溶かしたほっとレモンに蜂蜜梅干しを入れたくらいの甘酸っぱさ。ちょっと風邪引いたかも、ってタイミングで渡されたら「惚れてまうやろ!」って感じの。しかし、そんな様子も小一時間ずっと肩に手が回るかどうか、と見守り続ければ「アオハルかよ」という微笑ましさよりも「すんのかい、せんのかい!」が勝つ。
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