蜂蜜の日「すっかり遅くなってしまったな」
その日の菩齊村は、ここ一年で最も暑いと言っても良いくらい、気温が高い日だった。
謝憐は、”生い茂って手がつけられなくなった雑草をなんとかして欲しい”という願いを叶えるために、高齢夫婦の家を訪ね、一日がかりの作業を終えて菩齊観へと戻るところだった。
細かく散った草木や土埃が汗で張り付き、髪も肌もざらざらとして、少し払うだけでも煙のように細かい砂が舞った。
「……これは酷い。水浴びが必要だ」
少し咽せながら呟いたものの、すでに日は沈み、とても水浴びできる明るさではなかった。
仕方なくそのまま帰宅することにして、再び道なりに進み出した。しばらく進み、緩やかな曲がり道の向こうに菩齊観が見えると、自然と頬が緩んだ。
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