俺たちの城 俺たちにとって、丸亀のばあちゃんの家に行くことはすなわち、城に行くこととほぼ同義だった。
麓の遊園地や動物園によく行った。ばあちゃんから小遣いをもらって、小さな観覧車に乗ったり、アヒルにエサをやったりした。
傾斜がきつい見返り坂を、兄さんと競って何度も駆け上がり、駆け下りた。駆け下りるときが特に爽快で、傾斜で弾みがついて速く走れた。たまに足がもつれて転ぶこともあったけど。
毎年五月ごろにある祭りにも何度か行った。音頭の歌詞が書かれたうちわが、実家に何本もあるのはそのためだ。城の周り一帯の道路を車両通行止めにして、地域の人や地元の小学生が踊る丸亀踊りに、兄さんもたまに飛び入り参加して楽しそうにしていたのを覚えている。多分、今でも兄さんはあれを歌えるし踊れるだろう。
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