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    東瀬響

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    東瀬響

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    柴嶺、柘榴と真山の転生パロ②

    #異能バディ
    supernaturalBuddy

    大学構内、第2学舎へ続く渡り廊下。
     初めて千暁と再会して別れたあの日から、すれ違うことのなかったそいつはふらりと俺の前に立ちふさがった。
     何の用だ、と目を向ける。そして見張る。あの日とは違う、意志の強い眼差しが俺を射抜く。

    「ッ、……やっぱお前、憶えてんだろ」

     思わず距離をとった。千暁が手のひらをこちらへ向けたからだ。

    「……もう炎は出せねぇよ」

     千暁が腕を下ろす。ポーズは間逆なのに、降参しているように見えた。
     一瞬体中が熱くなったけど、それも本当に一瞬で、すぐに訪れたのは呆れだった。 自嘲するように笑みを浮かべる千暁は記憶よりもずっと痩せていて、再会した時掴んだ腕の感触は間違いではなかったと確信する。
     かばんから出した紫の炭酸を投げ渡され、少し話がしたいと示された。缶を受け取ると千暁は小さく息を吐く。

    「俺だって、もう消えたりしねーし、悠真も同じ。幻なんて、薬でもキメない限り見れないってさ」
    「何、アイツそんな冗談言うようになってんの」
    「そーだよ。俺が仕込んだ」
    「言い方。いつ?」
    「俺は幼稚園の時。何回やっても壁すり抜けらんねぇから思い出した」
    「ヤバイ子供じゃん」
    「悠真は小5らしい。俺が転校したのがきっかけ」
    「それからずっと一緒ってこと?」
    「そ」
    「あー、まぁ、仕込まれるか」

     気持ち悪いくらいスムーズなキャッチボール。再会の日、あんなによそよそしくされ、怒りを飛ばしたのが嘘のようだった。

    「で? なんで?」
    「んー? 何が?」
    「しらばっくれんなよ。今ここで悠真呼ぶぞ」

     スマホを取り出すとタンマタンマと止められた。
     ならばさっさと俺の大事な後輩でお前の大切なバディに嘘をついた理由を大人しく吐けと促す。

    「……なんか、なんだろ、あんまさ、憶えてないじゃん、アイツ」
    「ほーう」
    「意味深な返事ヤメテクダサイ」
    「続けろ」

     腕を組んで缶のプルタブを開ける。千暁はブラックコーヒーを一口飲むとゆっくり口を開いた。

    「……俺はさ、憶えてるよ。……全部。最初から最後の最期まで」
    「そうか。それはご愁傷さま」
    「ジュース飲みながら言うなよ感情ゼロか」
    「憶えてるから会いたくないヤツにやる感情は持ってねーな」
    「ちげぇよ。……憶えてねぇからだろうが」

     しゃがんだ千暁が中身の減った缶コーヒーを親指と中指で揺らしながら、地面に向かってつぶやいた。

    「柴嶺が、最期のこと憶えてねぇから、こうなってるんだろうが」
    「ウチの後輩であり親友に責任転嫁するのはやめてもらおうか」
    「大体柘榴が声かけるからだろ。避けてたんだぞ俺は」
    「マジ? 声かけろよ」
    「会話してくれ……」

     天を仰ぐ千暁の表情がやっと見える。
     深い溜め息とともに吐き出された嘆きと同じ顔は、だけどやっぱりやつれている。

    「で、臆病者の千暁クンは、悠真が全部思い出すのが怖くて何も憶えてないフリをしたワケか」
    「そうだよ」

     言葉を選んだ挑発をすんなり受け入れられて拍子抜けする。
     しっかり目を合わせて答えるその奥には、「だから柘榴も嘘をつけ」と言って見える。

    「考えとく」
    「それ驕ったろ」
    「ヌルくなってた。減点」
    「じゃあ買い直す」
    「必死だなァ、千暁」

     立ち上がる千暁にニタリと笑えば動きを止めた。
     身構えるところを見るに、本当に全部憶えてるようだった。俺が笑うのはよからぬことを考えてるときだと、かつて千暁が言っていたのを俺が憶えているように。

    「悠真は全部思い出してもお前を嫌ったりしねーよ」
    「……」
    「アイツは気づいてるぞ。お前に記憶があって、その上で嘘ついたこと」
    「泣かせたしな」
    「ハッ、泣いてねぇよ。そんなんで泣くほど悠真は安くねーわ」
    「マジ、おまえ、ほんと、そういうさぁ……」
    「相棒盗られて寂しいか? でもお前に俺らをどうこう言う権利はねーよ」

     だってほとんど他人だもんなァ、と再度煽ってみるが、それにノる様子は見えない。拳を作っては緩める。俺の言葉が正論だと、わかっている。
     どうやら気まぐれや中途半端に嘘を吐いたわけではなさそうだと判断して、飲み干した炭酸を千暁に返す。

    「捨てろよ」
    「ヌルかったけど飲んだのは『千暁の要望を受け入れます』の意。んで返すのは『納得はいってません』の意」
    「……わかった。ありがと」
    「いーえ。じゃあな、……真山クン」
    「……じゃ、柘榴さん」
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    東瀬響

    DONE柴嶺、柘榴と真山の転生パロ②大学構内、第2学舎へ続く渡り廊下。
     初めて千暁と再会して別れたあの日から、すれ違うことのなかったそいつはふらりと俺の前に立ちふさがった。
     何の用だ、と目を向ける。そして見張る。あの日とは違う、意志の強い眼差しが俺を射抜く。

    「ッ、……やっぱお前、憶えてんだろ」

     思わず距離をとった。千暁が手のひらをこちらへ向けたからだ。

    「……もう炎は出せねぇよ」

     千暁が腕を下ろす。ポーズは間逆なのに、降参しているように見えた。
     一瞬体中が熱くなったけど、それも本当に一瞬で、すぐに訪れたのは呆れだった。 自嘲するように笑みを浮かべる千暁は記憶よりもずっと痩せていて、再会した時掴んだ腕の感触は間違いではなかったと確信する。
     かばんから出した紫の炭酸を投げ渡され、少し話がしたいと示された。缶を受け取ると千暁は小さく息を吐く。

    「俺だって、もう消えたりしねーし、悠真も同じ。幻なんて、薬でもキメない限り見れないってさ」
    「何、アイツそんな冗談言うようになってんの」
    「そーだよ。俺が仕込んだ」
    「言い方。いつ?」
    「俺は幼稚園の時。何回やっても壁すり抜けらんねぇから思い出した」
    「ヤバイ子供 1835

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     初めて千暁と再会して別れたあの日から、すれ違うことのなかったそいつはふらりと俺の前に立ちふさがった。
     何の用だ、と目を向ける。そして見張る。あの日とは違う、意志の強い眼差しが俺を射抜く。

    「ッ、……やっぱお前、憶えてんだろ」

     思わず距離をとった。千暁が手のひらをこちらへ向けたからだ。

    「……もう炎は出せねぇよ」

     千暁が腕を下ろす。ポーズは間逆なのに、降参しているように見えた。
     一瞬体中が熱くなったけど、それも本当に一瞬で、すぐに訪れたのは呆れだった。 自嘲するように笑みを浮かべる千暁は記憶よりもずっと痩せていて、再会した時掴んだ腕の感触は間違いではなかったと確信する。
     かばんから出した紫の炭酸を投げ渡され、少し話がしたいと示された。缶を受け取ると千暁は小さく息を吐く。

    「俺だって、もう消えたりしねーし、悠真も同じ。幻なんて、薬でもキメない限り見れないってさ」
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     何の用だ、と目を向ける。そして見張る。あの日とは違う、意志の強い眼差しが俺を射抜く。

    「ッ、……やっぱお前、憶えてんだろ」

     思わず距離をとった。千暁が手のひらをこちらへ向けたからだ。

    「……もう炎は出せねぇよ」

     千暁が腕を下ろす。ポーズは間逆なのに、降参しているように見えた。
     一瞬体中が熱くなったけど、それも本当に一瞬で、すぐに訪れたのは呆れだった。 自嘲するように笑みを浮かべる千暁は記憶よりもずっと痩せていて、再会した時掴んだ腕の感触は間違いではなかったと確信する。
     かばんから出した紫の炭酸を投げ渡され、少し話がしたいと示された。缶を受け取ると千暁は小さく息を吐く。

    「俺だって、もう消えたりしねーし、悠真も同じ。幻なんて、薬でもキメない限り見れないってさ」
    「何、アイツそんな冗談言うようになってんの」
    「そーだよ。俺が仕込んだ」
    「言い方。いつ?」
    「俺は幼稚園の時。何回やっても壁すり抜けらんねぇから思い出した」
    「ヤバイ子供 1835