「ねえ、関口さん。僕は女じゃあないんですよ。だからねどんなに犯したって子供ができる心配はありません」
彼はそう言いながら胡座をかいた私の膝の上に乗り上げてきた。細長い両脚が私の身体をまたいだ。
「僕があなたの精子で身籠ってしまえたらどんなにいいかなぁ。でも僕は、僕自身の子供が欲しいんですよ。僕の一部である種から産まれた僕の子供が」
タイを解きながら、虚に歪めた目を私の視線と重ね合わせようとしている。しかし、私の視線と彼の視線が重なる事はなかった。何故なら彼の瞳が映すのは、目の前の私ではなく自分自身であったからだ。
シュっという音と共に襟からタイを引き抜いて畳の上に無造作に落とす。落としながら喋りつづけた。
「ぼくは、僕の一部から出来ている人間でないと愛せないと思うんですよその人間が愛されて褒められて慈しみを持って接してもらえて優しくされている所が見たいんですねそうされている事を確認できて漸く僕は赦されるような気がしているんです許可して認めてもらえる自分を許すことができるというか生きていていいと言って貰えている気がするんですよ多分ですけどああでもそうだな」
私のシャツの釦に指をかけて外していく。
「‥‥‥益田君」
形良く切り揃えられた爪が何故だか切ない。私は彼のその指先を嗜めるように握りしめ、釦を掛け直した。
「それってどうなのかなぁ、関口さん。どう思います?分かんなくなってきちゃったな」