馬鹿じゃないのかと益田は言った。嘲るような口調だった。
「馬鹿じゃないのか、死んでる人間を探してくれって?は‥‥っ、ふざけるなよ、死んでる人間なんか見つかるわけないじゃないか!探せば見つかるとでも思ったのか?生き返るとでも思ったのか!?馬鹿じゃないのか、死んだ人間が生き返るはずがないだろ!」
墓でも掘り起して現実を見ろよ!そう言って握りしめた拳を自分の腿に打ち付けた。
薄い唇を噛み締めて荒い息を吐いて何度も拳を打ち付ける。
「おい」
「ねぇ榎木津さん、僕はほんとうに馬鹿でした。馬鹿は僕ですよね、居もしない人間を見つけ出そうとしてたんですからね。っはは、笑っちゃうなぁ」
打ち付けた拳を凝視して益田は言葉尻を震わせた。
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