あかいろの糖衣「死んじゃった、金魚」
とある夏の終わりのことである。黒髪の美しい、そのジャイボという少年は、手に載せたその赤色を見つめてぽつりと呟いた。
つい昨日まで、女の履くスカートのような尾ひれを揺らめかせていたその金魚は、少年の手の上でぴくりともしなくなっている。もう二度と泳ぎ出すことがないだろうということは、見ればすぐ分かることだった。
目が白く濁り、かつての輝きを失ってしまったそれに、ゼラは美しさというものを考え直す必要があるなとふと思う。永遠の美というのは、かつて基地に集う仲間たちが憧れたものだった。
腐ったこの世に負けず、生きゆくものは美しいが、いずれ移り変わってしまう。しかし、死して尚美しく居るのは難しい。
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