実家も寮暮らしでも、余所の部屋からの賑わう物音や、生活音が多少伝わってくる毎日に馴染んでいるので、今まで同じ空間で寝起きを共にしていると言っても、東が言ったように、本当の意味で2人っきりになったことなど一度もなかったのだ。
左京とは逆の方向に横を向きながら、莇は自分の気持ちを上手く言葉にも態度にも出来ないでいた。
いつも106号室で共に過ごすだけで、それも嫌ではないけれど、それでも、結婚したんだし、それなら、もっとちゃんと、恥ずかしくてできるはずない事とか、こういうのはしちゃいけない事だとか、拒むつもりはない。
それなのに、左京の方から求めてくる事がないことに、不安が過ぎる。
よく分かっていない、こんなガキの相手するの面倒なのでは。
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