左京とこれからもずっと、支え合って生きていきたい。
莇が左京に結婚前提の交際を申し込み、2人の関係が恋人へと変わり、数年後それぞれの親への挨拶を済ませた。
2人の結婚に周囲の人間は理解を示し、前途を祝福した。
しかし、結婚といっても役所に書類を提出するわけでもなく、劇団と仕事を効率良くこなすのに106号室で暮らしている。
そして、莇は「人前で破廉恥なことするなんて、結婚式ってのはどうかしている」と相変わらずで、左京も「坊が望まないなら、挙式の資金は貯蓄にまわそう」と、誓約の言葉を、この部屋で2人きりで交わした。
今までと同じように互いの心を支え合い、たまに寄り添ってくちづけを交わす程度の穏やかな距離。
そんな関係でも良しとしていた莇だが、盆休み泉田家に帰省をした2人に、祝言など挙げる予定はないと耳にした泉田喜久雄の一言で状況は一変した。
「式を挙げないたぁどういう了見だ。周囲の人間に対して人生の節目としてのけじめも、覚悟もねぇのか!」
「ふざけんな!そんなに言うなら覚悟ってやつ見せてやるよ!左京もいいよな⁉︎」
久しぶりに見る親子の売り言葉に買い言葉の口喧嘩に、左京はしみじみ同意をした。