いやよいやよも柔らかな草をわけ隔てるように伸びる道はしっかりと踏み固められ、男はなんの憂いもなく意気揚々と闊歩する。
麗らかな日差しが男の赤みの強い髪を透かし、燃えるような生命力を現しているかのようだった。
がっしりとした上背のある体格に愛嬌すら感じる笑顔をかんばせにのせて、所々に咲く季節の花を愛でては、柵の向こうから興味津々と寄ってきた動物たちを撫で。
「若…寄り道しすぎです」
「ん?そうか?それより見ろこのつぶらな瞳を!愛らしいとは思わんか」
ちっとも進まない道のりに従者の苦言が飛んだが、これっぽっちも刺さっていない。
それどころか、めぇえ!と力いっぱい鳴く子羊に夢中である。
大きな身体をいっそ器用に折りたたみ、デレデレと子羊を柵越しに撫でる姿はとても領主の息子とは思えぬあどけなさだった。
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