お誘い「ダメですぅ」
大内が入縄の軍船に来てから数日経ちそれなりに互いが気を許し始めた頃、休憩中の入縄に大内がある提案をするが即答で断られてしまった。
大内の私物のように扱われているソファに座りながら紅茶を飲む入縄を隣に座りながら不満げに見つめる大内は、入縄と居る時のみ自由にされてる手を相手の太腿へと置き甘えるように肩に肩を寄せて
「たまにはいいだろ?いつも俺の事……その、抱いてるんだし、俺だって上やりたい」
そう食い下がれば、わざとらしくため息をつきながら紅茶を机の上へと置き太腿へと置かれている手の甲へと手を伸ばすと、そのまま軽く抓りながら冷ややかな視線を送り
「ダメですよ、薫サンはご自分の立場を理解していないようですが…こうしてこの手を自由にして差しあげてるのもワタクシだという事を忘れて頂いては困りますねぇ」
そう伝えれば痛がる様子は見せないものの不満げな態度を続ける大内に苦笑しながら、手を離せばその手は次に大内の頬へと伸びて部屋に監禁し続け日に当たっていないからか、出会った頃よりは白くなった顔をじっくりと眺めつつそこへと触れ
「昨日もあんなに可愛がって差しあげたのに、足りないと仰るなら沢山鳴かせて差し上げましょうか?そんな元気が無くなるまで」
ゆるりと撫でながらもどこか愛おしげに笑う入縄に、若干頬が紅へと染まりつつもそうじゃないと反論しようと上半身を後へと引いて眉間に皺を寄せ
「別に足りないとかではない!…あんたを抱きたいだけだ。抜くのはいいのに…その先はダメなのか?」
噛み付く勢いで不満をぶつけるがこの方法ではダメなのも分かっていたため、直ぐに少し方向を変えて離れた手を両手で握り可愛こぶるように甘えた声で強請りつつ、目元赤らめじっと照れたような表情で見つめれば同じくこちらを見つめる入縄は少し驚いたような表情を浮かべるが大内の表情をじっくり眺めた後に一見優しげに見える微笑みを浮かべて
「そんなに可愛いお顔をされてもダメなものはダメです。」
と先程と変わらずキッパリと拒否をしつつも、お強請りをされるのは悪い気はしないのか機嫌良さそうに大内の顔へと顔を寄せてじっと見つめて
「ただ、変わりと言ってはなんですが…いい物を差し上げます」
距離の近い入縄に戸惑いつつ顔を赤らめながら目線さ迷わせている大内に反して楽しげな様子でポケットへと手をやると、銀の包み紙を出して目線を外し握られた手を見つめながら
「これ、外して貰えませんか?」
そう言えば、大内は素直に離して手袋をわざとなのかゆったりと時間をかけて外す入縄の手元をじっと見つめている…分かりやすい人だと内心ほくそ笑みながら手袋を外し終えれば、銀紙を外しポケットに入れていたからか体温で少し溶けたチョコレートを取り出して相手にみせた。
これは、大内の大好物だ。見た瞬間瞳を輝かせている様は子供のようで思わず笑い声が漏れてしまいそうだ
「まて、まてですよぉ…薫サン」
まるで犬を躾けるかのように声をかけ指で摘んだチョコレートがじわりと溶け指を汚すのを体感で感じ取れば、大内の口元へと持っていき優しげに微笑み
「どうぞ、ワタクシの手から直接食べてください」
そう言えば、一瞬眉間に皺を寄せるが入縄のする事に今更驚くことの方が少なくため息着けば、入縄の指先へと唇を押し付ける形になりながらもチョコレートを食み己の口内へと運べば、舌の上で広がる甘みに思わず顔を綻ばせて分かりやすく喜びながら食べるが入縄の指は大内の動きに合わせるように唇に押し当てたまま着いてきて、不思議そうに目をぱちぱちと瞬きする大内へと
「舐めてください。汚れてしまったので……犬は舐めるのが得意でしょう」
特徴的な歯並びを見せず緩やかに口端を上げた好青年のような笑みでとんでもない事を言う男に、大内はそういう事かと溜息をつきそうになる。
目の前の男が何の見返りもなく大内の好物を差し出すなんて稀であるのに…
仕方ないと唇をもう一度開けば、人差し指に付いたチョコレートを舌先で丁寧に舐めてから、己の唾液を吸い取るようにチュッと音を立てながら吸い付いた後に親指へと舌を伸ばせば、無遠慮に口内へと侵入してきた。
つまり…咥えて舐めろと言う事だろうと素直に咥えれば指先やついでに第1関節を丁寧に舐めたり、吸い付いたりとまるでおしゃぶりを舐める赤子のようにしつつ入縄をちらっと見れば、「はふ……」と熱っぽい吐息を吐きうっとりと大内を眺めている
「アハ、とっても可愛らしいですよォ…まるで、そうですねぇ……中を解す前にお強請りしているみたいです」
クスクスと笑いながら行為を想像させる言い回しをされては、収まっていた熱はカアッと頬へと集まり分かりやすく動揺してしまう
「…抱きたいとお強請りしてきたのに、本当は下が良かったんですか?ふふ…そうなら素直に言ってくだされば良いのに…で、どうしますぅ?」
挿入したままの親指でグッと強く舌を押しながら勝ち誇ったと言わんばかりの笑みを浮かべて首を傾げられては、また負けを認めざるを得ない。
もっとも、先程の言葉でこの男に抱かれる快楽を思い出し身体が疼き始めているのだ…。
またこの男の手の上で踊ってしまう…
そんな事をぼんやりと考えながら入縄を見つめるしか無かった