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    oshiri republic

    @bigmuffpi_

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    oshiri republic

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    アキくん生存ifのデンジ目線のSSです。
    急に50代くらいのアキくんのことをかわいいなぁ〜と思ってるデンジくんが降ってきたので供養です。

    長く付き合っていくうちに、付き合い始めた頃のドキドキする感情が落ち着いてくる、次第に隣にいるだけでホッとするような関係になる、なんて深夜のテレビが言っていたけれど、全く同意できない。数十年連れ添って見慣れたはずの寝顔。カーテンから漏れる朝日にむずがるように顔を顰めたこの男の顔を見るたび、毎日抑えきれない感情に胸が高鳴るのだ。

    「お前らに教えるのは存外楽しかったから」
     銃の悪魔を倒して、アキは公安に籍を置く理由が無くなった。立場上、ほぼ義務的に俺やパワーに勉強を教えることになってしまったけれど、やってみると想像以上にやりがいを感じたようだ。その経験を活かせそうだから、と公安を辞め、民間のデビルハンターの誘いを断り、商店街の外れにある小さな学習塾で働きはじめた。
    「パワーに比べたらみんな聞き分けがいい、おりこうばっかりだ」
     塾で働きはじめたばかりの頃は、慣れない業務に草臥れた顔をしているのに、そんな強がりを言っていたこともあった。けれど、アキは本人の見立て通り、子供の適正を見て教えるのが上手かった。どんな問題児にもとことん付き合った。そんなアキの真摯さを目の当たりにした子供たち、他の大人は嫌いだけど早川先生は別、なんて言ってよく懐いた。すぐにアキはその塾の看板人気の講師になった。

    「余命3ヶ月って言われた人が10年生きることもあるらしい」
     だから、2年しか生きられないはずだったアキがこんなに歳を重ねてもおかしくないんじゃないか、なんて初めは冗談半分だったのに、どんどん現実になっていった。
     もともと眉目秀麗だったアキは、歳を重ねるごとに男らしい色っぽさなんてのも兼ね備えていった。笑い皺の付いた目元、白髪混じりの髪は何年経っても豊かなままで、体型維持のために運動だって欠かさない。
     そんな美しすぎる男が所帯も持たずに何十年も俺と一緒に暮らしてくれているのは、単にタイミングが良かったのだ。


     家族の仇を取るために人生を捧げてきた男は、その目的を果たした後はひどく危なげに見えた。迷子のようだ、と喩えるのはすこし違う。彼の目には安堵が浮かんでいたから。確かに安心した表情をして、憑き物の取れたような顔をして、なのにその目に生気はないのだ。
     底辺生活で培った経験が警告を鳴らす。このままじゃ、カースの示した2年を待たずして自ら命を絶ってしまう未来だってあり得るような気がした。
     それから俺は必死になって口説いて、アキがいないとダメなんだって、ずっと一緒に暮らしてくれって縋って、アキの作るカレーが好きだから毎週金曜はカレーがいいとゴネて、やっとアキは首を縦に振った。
     
     なるほど、やはりテレビの言っていたことは正しいのかもしれない。
     付き合いはじめた頃はとにかくアキを生かすことに手一杯で、互いに恋慕しているから付き合い始めたわけではなかった。
     それから過ごした時間が少しずつ俺たちを恋人にしていったのだろう。だから現在進行形で今もまだアキに恋をしているのだ、きっと。

    「歳取ると早朝から目が冴えるって言うけど、あれ嘘だな」
     薄く目を開けたアキがそう言ってまた目を閉じるから、俺も二度寝することにした。
     恋人と眠る休日の朝は毛布の中にこそ幸せがあるのだ。
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