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    みゃみゃ

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    みゃみゃ

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    オメガバースの若トマ
    α綾人×Ωトーマでトーマが巣作りして甘やかされてるだけの話

    椿の巣にて愛希う 清涼感を漂わせる上品な甘い香りに鼻先を擽られ、トーマは軽い酩酊感を覚えながらも澄んだ若葉色の瞳を潤ませた。
     熱い吐息を零しながら高鳴る胸を落ち着かせるようにそっと腕を擦ると、その様子を見つめていた綾人が小さく笑って、トーマの跳ねた髪に向けて靭やかな指先を伸ばした。
    「私は部屋の外で待っているから、巣を作れたら声を掛けて呼んでおくれ」
     優しく頭を撫でられて心地の良い擽ったさを感じながら、艷やかに潤んだ瞳で上目遣いに綾人の顔を見つめる。
     そうすると目尻を垂らした柔い笑みと目が合い、優しい淡藤色の眼が愛おしい温度を帯びているのを見てトーマは擽ったくて堪らなくなり、ほんのりと淡く色付いた薄い唇を微かに震わせた。
    「はい。……待っていてください、若」
     羞恥心に似た擽ったい気持ちを紛らわせるように視線をついと逸らしてそう言えば、綾人は愛らしい反応をしてみせたトーマを見つめて、嫋やかな笑みを一つ零した。
    「ああ、楽しみにしているよ。……それじゃあ、また後でね」
     ぴょこんと跳ねた金の髪をもう一度優しく指先で撫でて、綾人は柔い笑みをトーマに向けながらそうっと静かに襖を閉じた。
     軽い音と共に二人の間を一つの襖が隔てて、愛しい顔が見えなくなる。
     それが少し寂しくて胸がきゅうと締め付けられたけれど、トーマは唇を弱く噛んで切ない気持ちを誤魔化し、踵を返して畳の上をゆっくり歩いた。
     足を一歩前へ出し、藺草の畳を踏む。しっかりと足を踏み出したつもりだったけれど、トーマは部屋に満ちた綾人の香りにあてられてしまい、甘い痺れが身体に伝って足が震えそうになってしまった。
     それくらい綾人の部屋にはトーマのオメガとしての理性を脆くさせる甘い香りに包まれていて、トーマは時折熱い吐息を漏らしながらどうにか衣装棚の前へと辿り着いた。
     目の前にある衣装棚に手を添えて、勢い良く扉を開く。
     主の衣服が仕舞われている衣装棚を無遠慮に開くことへの躊躇いは、今のトーマには殆どと言っていいほど無に等しかった。
     綾人なら許してくれると朧気な頭で分かっていたし、それくらいトーマは綾人の香りによって理性をぐずぐずに溶かされてしまって、「若の香りに包まれたい」と本能に近い慾で頭がいっぱいになっていたのだ。
     衣装棚には綾人の服がいくつも仕舞われていて、トーマはそこから腕に抱えられる限りの服を引っ張り出すと、部屋の真ん中に敷いておいた布団の上に向けて腕に抱えていた衣類を無造作にどさっと放り投げた。
     のろのろと覚束ない足取りで布団を踏み、白い敷布の上に散った衣類に手を伸ばしながら座り込む。
     トーマはそこから静かに一枚の布を手に取ると、ゆっくりと腕を持ち上げて綾人の服にそうっと顔を近付けた。
    「……わかの、におい」
     綾人の服を一つ両手に抱えて鼻を鳴らせば、上品な甘い香りが鼻先を擽る。
     優しく、透明感のある爽やかな空気に抱き締められて、頭が喜びに蕩けてじわりと熱くなる。
     綾人というアルファの香りが堪らなくオメガの心を擽ってきて、トーマは頬を染めながら若葉の瞳を潤わせ、蕩けるような笑みを浮かべた。
     もっと、もっとこのにおいに包まれたい。
     トーマが抗えぬ欲を見せた頃には既にその顔は熟れた果実のように赤く染まっていて、潤んだ瞳で綾人の服を見つめては切なげに眉を下げ、掠れた吐息を口の端から零した。
    「ぁ、ッ、わか……、わかぁ……っ、」
     まるで子犬が耳を垂らして「くぅん」と鳴くように、トーマは涙混じりの湿った声を漏らして何度も愛しいアルファを呼びながら布団の上の衣類を手で掻き集める。
     少しばかり形を崩して皺を作ったりなんかしながら、一枚一枚を重ねて積み上げ、それが円形になるように服をいくつも並べて重ねたりなんかして。
     愛しいアルファの気配を感じたいという切ない気持ちがぽろぽろと透明な雫を溢れさせてきて、頬に涙を伝わせながらもトーマは一生懸命巣を作った。
     発情期が近いオメガが、「アルファの香りに包まれたい、アルファの香りを感じていたい」という思いで愛しい番の服を掻き集めるこの行為を、トーマはもう幾度となく繰り返していた。
     番になる前は少し気持ちが浮つく程度だったけれど、番になってからは巣作りをしたいと強く思うようになり、もはや発情期のそれと同じようにトーマにとって発情期前に巣を作るのは半ば本能に近しいものになっていた。
     巣作りをしたいと強く思うようになったきっかけが何なのか、思い当たる節がいくつもあって何が特別なきっかけとなったのかはトーマ自身分からなかった。
     けれどトーマが作った巣を見た綾人が「上手に作れたね」と、「いいこだね」と言って愛おしげに頭を撫でてくれるのが嬉しくて、幸せで。
     トーマは発情期が近くなるたび、健気に綾人の服を集めては愛しい香りのする巣を作りたくなってしまっていた。
     若が、愛しいアルファが、愛する番が、オレが巣を作るのを待ってくれている。
     発情期の間はいつも自分が作った巣の上で綾人にめいいっぱい愛されているからだろうか。トーマは綾人の香りに包まれたいという気持ちと、綾人に愛されたいという気持ちが綯い交ぜになって、甘い熱で震えた手を必死に動かし番と過ごす巣を懸命に作った。
     そうしていくつもの衣服を重ねて形を整えて、トーマは肌触りのよい布を一度そっと撫でてから手を止めると、出来上がった巣を眺めてうっとりと目を細めた。
    「わか……ふふっ、わかぁ……」
     綾人の服で出来た巣に身体を寄せて頬擦りすれば、大好きな甘い香りが鼻を掠めてトーマの身体を包み込む。
     番の匂いに包まれていることが何よりも幸せで、トーマは柔く暖かな安心感と多幸感に顔を綻ばせながらも潤んだ瞳に柔い熱を浮かべた。
     そうっと瞼を落として目を瞑りながら、綾人の服に何度もすりすりと頬擦りをする。
     愛しい番の香りや温もりで気付けばトーマの頬はすっかりと緩んでいて、甘い熱に溶かされたように頭がとろとろと蕩けてゆく。
     暖かな空気に目を細めながらトーマは綾人の服に顔を寄せると、唇をそうっと落として触れるばかりのキスをした。
     綾人の服から顔を離し、淡い色に染まった頬に手を添えながら上体をゆっくりと起こす。
     触れた頬はとても熱くて、トーマは恥じらうように眉を下げながら薄い唇の端から僅かに吐息を零した。
    「わか。……もう入っても、大丈夫です」
     熱を帯びた掠れた声が甘い香りのする部屋に響く。
     トーマが声を掛けるとすぐに襖がゆっくりと横に引かれ、名を呼ばれた綾人が淡藤色の瞳でトーマの姿を見つめながら静かに部屋へ入ってくる。
     一歩、二歩と綾人が近付いてくるたび、穏やかな甘い香りが濃く感じられて、トーマは潤んだ瞳を蕩けさせた。
    「その、若……オレ、うまく作れてますか……?」
     作り上げた巣をそっと静かに撫でながら綾人の顔を下から見つめる。
     若葉色の瞳を不安げに揺らし上目遣いにそう尋ねれば、綾人は優しい笑みを浮かべながら「もちろん」と言って小さく笑い、巣に寄り添って座り込むトーマの傍にそっと腰を下ろした。
     綾人は庇護欲を唆るように潤んだ瞳を向けてくるトーマの頭に手を伸ばすと、柔らかい金色の髪を靭やかな指先で擽るように撫で回した。
    「上手に作れているよ。ちゃんと巣を作れて偉いね、トーマ」
     優しく撫でられながら褒められるのが嬉しくて、目を細めながら顔を綻ばせる。
     そうしてトーマが緩んだ頬にじんわりと熱が広がってゆくのを感じていると、頭を撫でていた綾人が金の髪からそっと手を離し、その手をトーマの背に回して優しい力で身体を寄せた。
     トーマは抵抗する気だなんて少しも見せず、されるがままに綾人の腕に抱き締められて、嫋やかに揺れる髪から香る綾人の甘い匂いにうっとりと目を蕩けさせた。
     トーマが頬を淡く染めながら綾人の顔をじっと見つめていると、綾人は目を細めて優しく微笑み、トーマの熟れた肌を撫でながらゆっくりと顔を近付けた。
     そっと、柔らかい唇を重ねて触れるばかりの口付けをする。
     静かに顔が離れてゆくのを目で追いながら、トーマは綾人からの優しい口付けや甘い香りですっかり蕩けた表情をし、潤んだ若葉の瞳で綾人の顔を見つめた。
     そうして艶めく唇から吐息を零すと、トーマは掠れた甘い声で「すきです、」と一つ囁いた。
    「すき……、すきです、わか……」
     軽やかに鼻先を擽る上品な香りがトーマの頬を染め上げてゆく。
     そのさまを眺めて綾人は恍惚とした表情を浮かべると、嫋やかに細められた瞳で愛おしそうにトーマを見つめた。
    「ふふっ……私も好きだよ、トーマ」
     穏やかな低い声で蕩けるほどに甘い言葉を紡ぎ、綾人は愛を囁いたその唇でトーマの薄い唇を静かに塞ぐ。
     熱を帯びた吐息すらも飲み込んでしまうほどに深く、互いの温度で蕩けてしまうくらい甘く熱い口付けに、トーマは熟れた果実のように頬を染めて綾人の身体をきゅっと弱い力で抱き締めた。
     睫毛を下ろして潤んだ瞳を閉ざし、甘さを纏った清らかで優しい香りに身を委ねる。
     愛しい匂いに包まれる幸福感に頬を柔く緩ませながら、ぴょこんと跳ねる金の髪を揺らし、トーマは愛しくて堪らない番の体温に寄り添うようにそっと身体を寄せて笑った。

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