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    hayama_rindou

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    hayama_rindou

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    ウーーーーーン供養兼メモ!!!!!!!!!

    #twstプラス
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    🐚寮長全力捏造 🐙not監🐚の元寮長について妄想したいなという気持ち。
    ホウライエソの人魚で、その醜さと陰気さから寮生にも避けられていたらいい。才能は充分とは言えない程度にあって、いつもどこかを見てブツブツ呟いてるような奴。人とも関わらないし人望もない。醜い以外に特筆すべき点もない寮長。

    簡単に寮長の座を奪えるだろうと考えた🐙は一旦彼に近づく事にする。彼は人と関わりのない人間関係一年生だったので、🐙の優しさにすぐ絆された。友達もいない彼は🐙だけを友人と慕った。
    しかし話してみれば彼は随分と博識で、話も合う。どんな話題を投げてもとんと返ってくるその会話は心地よかった

    同時進行で、彼の周りの人の心を掴む事もし始めた。誰も彼と関わりたがらなかったので簡単で、美しい🐙を慕う人物は増え、醜い彼は忘れられていった。
    🐙が彼を脅かすのも時間の問題だというのに、彼は🐙を慕い続けた。
    🐙はなんだか苛々とした。順風満帆だというのに、納得がいかないような気がする。

    『🐙くん、🐙くん。見てよこれ、すごいでしょう』
    写真を撮るのが好きだと言った彼は、たまに美しい風景を🐙に見せてくる。凝り性の彼らしくプロにも負けないような美しい写真で、彼の撮るそれはいつも色鮮やかで生き生きとしていた。
    🐙は、それを見る時間がそんなに好きではなかった。

    🐙の見る世界はそんなにも色鮮やかではないし、美しくも生き生きもしていないから、彼と視界の齟齬が発生している気がして嫌だった。
    『🐙くんくらい要領が良ければ、すぐにこれくらい撮れるようになるよ』
    というけれど、一生そんなもの撮れる気はなかった。だって、🐙の見ている世界は違うから。

    ある日、🐙は彼に呼び出された。とうとう寮長の座についての話だろうかと何故か嫌な汗をかきながら寮長室に入ると、色彩が唐突に反乱を起こした。
    『あ、よく来たね。掛けて掛けて〜』
    へらりと笑った彼の手はひどく汚れていて、絵筆には美しく鮮やかな色がへばりついていた。
    アトリエだと彼は言った

    曰く、彼にはなんの才能もないのだと。
    曰く、美しい景色をおさめたいのだと。
    曰く、写真では不完全なのだと。
    ふざけるなと言ってやりたかったけれど、そう言うには彼の絵は美しすぎた。
    写実的というには色は独特だけれど、どうしてかそれがよく似合っている。まるでそれが真実であるかのように

    思わず、🐙は彼の部屋を見回していた。付箋が多く挟まれた本に、何かの実験の跡。絵筆はさまざまな小物に付着し、お世辞でも綺麗とは言えないのに美しいと感じる。
    『もうすぐ、寮長の座を君に渡そうと思ってたんだ』
    『……は?』
    『あれ。🐙くんなら分かってると思ってたけど』

    沢山の風景画に囲まれた“アトリエ”で、芸術家は青年へ笑い掛ける。その時初めて、彼の目を見たとほうけながら思った。
    『知ってるよ。おれなんかに近付く人なんて、そのくらいしかいないからね』
    全てを見透かすような、不思議な虹彩に射抜かれる。
    『これは、おれの最後の作品なんだ』

    愛しいものを見るように制作途中のカンバスを見つめた芸術家。
    『昔から、色んなものを見たいと願っていてさ。おれはとっても目が良いんだ。本当は暗い海の底、何も見えなくて良かったのにね』
    作品が完成すれば、きっと彼は出ていく。片付け上手で凝り性の彼の事だ。きっと痕跡も見せず消えるだろう。

    『──契約をしたんだ。二度と海に戻れない代わりに、よく見える目をもらった』
    🐙は、かつてそんな対価を差し出した醜い盲目の魚がいた事を思い出す。まさか、まさかあれは──
    『両親は笑って送り出してくれたよ。こんなおれを愛してくれたのは、後にも先にも彼らだけだ』
    彼の筆は止まらない

    『これが完成したら、おれは旅に出るんだ。🐙くんにも見せたでしょ、旅行誌に載ってた──』
    そんなものより、貴方の撮るNRCの写真の方が美しいと感じた。
    そのまま伝えたら、彼は心底嬉しげに笑った。
    『それならまたいつか見せにくるよ、🐙くん。きっとお別れは永遠じゃないさ』

    『旅をしたらまたここに来ようか。住所が変わっても大丈夫。風に乗って、潮騒に流して見せにくる』
    ひどく優しい声だった。あんなにも醜いと言われているゴツゴツした手は、🐙にとって馴染みのあるものになりすぎたようだ。
    『嘘をついたら、承知しませんからね』
    『わかってるよ』

    彼はおちゃらけるように笑った。

    『約束するよ。きっと見せに来る。どれだけ遅くなっても遠くへ行っても、海はどこまでも繋がっているから』

    貴方は海に還れないでしょう

    『そうだね。けれど海は美しく青い。いつになるかわからないけれど、人になったおれは最期は海に還りたいなぁ』

    縁起でもない事を言わないでください

    『ううん。幸福な事だよ。確かにこの生は短い、でも最期に両親と、君の元へ帰れるじゃないか。
    おれはね、海が見たいんだ』

    腐るほど見たでしょう、そんなの

    『いいや。人の世界は、海が青く透明なものだと言われてるじゃないか。おれはそんなの見た事ない』

    深海に住む人魚である彼は、暗く深く冷たい世界しか知らない。

    『海の青さを、透さを、清さを、温かさを知りたい。
    写真は撮れないから、君も一緒に見てくれたら──この上ない幸せだ』

    笑って彼は、手を伸ばした。もうすっかり馴染んだその高い体温に触れ、🐙は静かに頷く
    初めて約束なんてしたと、

    こっそり思いながら。

    その数ヶ月後、彼は🐙に寮長の座を譲って消えた

    『なぁ〜、ほんとに良かったの、🐙』
    🦈が首を傾げて尋ねた言葉に、🐙は笑って返す。
    『ええ! 何が問題だと言うのですか!』
    彼は徹底的に自由だった。ひ弱なくせ、非力なくせ、ただ愛するものを追い求めていた。その通り、世界を見るつもりなのだ。

    『潮騒に流して、風に乗って、会いに来てくださると。撮った写真を、彼の世界を見せてくださると、約束したんです。
    そして最後には、僕に……この僕に同じ景色を見せたいと言ってくれたんです。充分でしょう?』
    🐙の無自覚な執着に近い歓喜に、🦈はそう、と答えるしかない。
    良かったね、と

    数日後、彼は水死体で発見された。
    手足を縛られた状態で、しかしもがき苦しんだ様子もなく、醜い体をさらに醜くして死体となって。

    際限まで見開いた瞳孔があまりにも不気味だと、随分と加害者を恨んで死んでいったんだと言われている彼の秘密を、🐙だけが知っている。🐙だけが、破られた一つの約束に気が付いている。

    『普段は時間厳守するくせに、どうしてこんな時だけ貴方は……』

    怒りは、もういっそ湧かなかった。

    悲しみだけがただ🐙を支配する。彼が見つかったと言う浜辺には、未だ行けていない。

    数日後。彼が被写体にしていた一本の木の前に佇む🐙の姿がある。
    彼が使っていて、もういいからとくれたカメラを構えて、ぱしゃり。
    本通り、彼の教え通りしたはずなのに、現像された写真を見てため息を一つ。

    『ほらね。あの色鮮やかな世界は、貴方のものでしかないんですよ』
    僕にもできるなんて、とんでもない嘘つきだ。どうしてくれる、これからどんな写真を見ても、貴方以上のものを探すことなんてできないだろう。
    ゴツゴツした手から生み出される、美しい景色が好きだったとようやく気が付いた。

    空を見上げる。かつて彼が語ってくれたことがあった。
    『最初はね、綺麗だと聞く空の先には何があるんだろうって、思ったんだ。だから、陸に来た』
    何もない。何もないのですよ、寮長。色褪せた青が広がっているだけです。
    🐙は薄ぼけた世界がもっとぼんやりとしていく様子を、じっと見ていた。

    とろり、と海水のような塩辛い雫が頬を伝う。

    『……海は、美しかったですか。寮長』

    申し訳ないような、困ったような、けれど満足そうな笑顔の彼が、頷いたような気がした

    「🐙せんぱーい、こんにちはぁ」
    「おや、監督生さん」
    異世界から来たと言う男が、🐙の後を追う。何か用事があるのだろう。無得にするのも二号店の開店を狙う以上良くないと判断し、足を止める。
    「この間、❤️と♠️と◯◯海岸行ったんですよね」
    「ほう」
    何たる偶然。彼が見つかった場所だった。

    これ以上話していたくないような気がしたが、言葉を切る前に監督生が何かを取り出す。
    ──それは、色褪せた小さな写真。
    「……これ、は」
    「メッセージボトル? みたいなのが見つかって。🐙先輩宛だったんで──🐙先輩?」
    言葉は出なかった。

    鮮やかな。
    鮮やかな、あの色彩が。
    彼の、世界が。

    二度と見られないと思っていたそれが、手の中にあった。

    「遅い、んですよ、いつだって……!」

    『──潮騒に流して、風に乗って、見せに来るよ』
    彼の言葉が、ありありと。

    ──あぁ、腹が立つ。腹が立つほど、貴方は律儀だ。

    優しい、彼の笑顔を思い出した。
    最後まで結局、この感情に名前はつけなかったけれど。

    ねぇ、僕は、貴方のことだって、美しいと思っていたんですよ。
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