正しい棺 うだるような暑さの中で大きく伸びをした。当たり前のように太陽が人をかき乱す。こういう時は屋内で情報収集に勤しんだ方が楽だ。そうは思ってもこの職業も他者の信頼を得るには最高の仕事であるので手は抜かない。舌で口内にある人の怠惰さを集めたような重くるしい甘さの塊を転がした。溶けて小さくなったその味があまり好みではなくて、奥歯で噛み砕いて小さな欠片にしてしまう。
空腹は嫌い。優しさは好き。口寂しいのは苦手。無言で慰めてくれるキャンディが欲しくなる。
自分より背の高いその後ろ姿に向かってとびきりの笑顔を向ける。
「グレ~イ! 今日もお疲れ様!」
落ち着いた暗めの髪色を持った彼は、腕で額の汗を拭っている途中の姿勢のまま振り返った。暑さで少し頬が赤らんでいるが、それは健康そうな色合いを持っていた。
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