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    さとうしょうゆ

    さとうの作品(妄想)置き場
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    さとうしょうゆ

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    5月6日 ワンドロ
    青空

     春風が薫る春の季節。四季を一周し再び生命の息吹を感じる温かな春が訪れる。お天道さまがにこにこ微笑みを溢しているかのようにぽかぽか温かな日差しが照り付ける。こはくは空いた時間を持て余し屋上庭園にお気に入りの木の上でパソコンを手にくつろいでいた。
    「ちと前までは桜が満開に咲き誇っておったんにすっかり花弁が散ってまって緑色になってもうたな」
     木の枝に腰を掛けつい最近までここに桜が咲いていたのに、花は風に揺られ空を舞い踊り空を自由に飛んでいってしまった。青空が澄み渡る気持ちのいい風を感じながら、ネットの海を探索していたこはくは視界に映る雲一つない綺麗な青空を見上げる。
     桜が咲いていたころは、満開の桜を見に行こうとCrazy:Bの面々と公園で盛大に花見をして今まで毛嫌いしていた桜をかけがえのない仲間たちと楽しみもう一人ではなく桜の下を仲間と共に歩けることに少しだけ嬉しかったのを思い出す。
    (あんときは花見なんちいうのは建前で燐音はんが酒盛りしたかっただけで、ぎゃあぎゃあとニキはんと一緒に騒いどってけたたましかったけど楽しかったなぁ。ニキはんの花見弁当も美味しかったし、去年は桜をゆっくり見とる余裕なんちなかったもんやからええ思い出が出来てよかったわ。お天道さまに照らされて見る桜もよかったけど夜の暗闇に人工ライトでライトアップされた夜桜も風情感じられて綺麗やったなぁ)
     パソコンを膝に乗せ、スマホを取り出し花見をしたときの写真を眺め、大切な思い出が蘇る。桜の写真、青空を背景に桜が写った写真、ニキの花見弁当、そしてたまたま撮れてしまった桜とHiMERUの写真。
    「ほんまHiMERUはんお顔が整っとるなぁ。いつどんな時でもHiMERUはHiMERUですからっちいうのは嘘やないっちことかいな」
     スマホから目を離し、澄み渡る青空を眺める。意識しているわけではないが、よく目に映るものだから水色を見かけるとHiMERUのことを思い出す。ユニットメンバーでもあり、こはくにとって大事な人でもあるHiMERUは今何をしているのだろうか。
    (わしはお天道さまに誇れるもんやないけどこうやって今、陽が当たる居場所を見つけて好きに自由に飛び立ってるけど、主はんはどうなんやろな)
     綺麗に澄み渡る青空は彼をどう思っているのだろう。他人のことだけど、仮面を被り自身を偽る彼のことをふと考えてしまう。燐音とニキみたいに線引きなどない対等の関係性に少しだけ憧れているも、HiMERUとこはくは未だ対等な関係になれない。なれないどころか、一線を引かれ近づくことを許されていないようにも見える。
     (わしは主はんのこともっと知りたいっち思っとるんよ。知られるんが怖がっておったら前に進めへん。HiMERUはんがわしのことどう思っとるか分からんけど、わしはもっと主はんのことを知りたいっち思っとるで)
     青空に向かって語り掛けても彼に届くはずもない。空振りをする思いにいつか彼が明け透けに晒して歩を進めて名が付く関係性になれるのだろうか。
     「そうなればええんやけど」
    「なにがええんやですか」
    青空を見上げていたこはくは突然下から馴染のある声がぽつりと呟いた言葉に返事を返してきて驚いてパソコンを落としそうになる。
    「っわぁ、びっくりしやないか。HiMERUはんなんでそこにおるん?」
    「それはこちらの台詞なのですよ。行儀が悪いですよ桜河。集まりがあるというのにシナモンに居なかったので探していたのです」
    「そやった。わざわざ探さへんでもスマホで連絡してくれればよかったのに堪忍なHiMERUはん」
     景色を眺めるのに時間を確認するのを疎かにしていて、これからCrazy:Bの仕事会議があるのを忘れていた。慣れた手つきで木から身軽に降りるこはくにHiMERUは葉っぱがついていますよと髪を撫でられ整えられる。それはまるで末っ子のこはくを可愛がる心配性な兄のようで心がむず痒くなる。
     (主はんはわしに隠し事しとる癖にわしに誰かを当て嵌めて代わりにしとるのほんまズルいわ)
     「それで木の上に登って何をしていたのですか」
     「ええ天気やったから日光浴しとったんよ。後、HiMERUはんのこと考えとったわ」
    「HiMERUを?」
    「せや、主はんのこと考えとったら時間忘れてしもうたんや。わしの心を掴んで離さない主はんのせいで燐音はんにからかわれるわ」
     ずるいお人に何か仕返しがしたくなったこはくは、少しだけ意地悪に時間を忘れたのはHiMERUのせいだと言ってのける。HiMERUはクエスチョンマークを頭に浮かべ、IQが高い頭脳を駆使して懸命に考える姿を横目に映しこはくは、ほな先行くでとHiMERUを置いてシナモンへと向かう。
    「桜河」
     追いかけてくるHiMERUを無視してこはくは心の中でため息をつく。少しでも彼の心の中にこはくだけの色彩を残せたらいいなと子供っぽい振る舞いをしてしまう。
    (問い詰めたところでHiMERUシークレットっちいうて躱されるんや。そうやったらたまにはHiMERUはんを困らせてもええやろ。誰かの代わりやない。わしは桜河こはくじゃ。わしを見てわしを知ってかくれんぼしとる主はんが背中を預けてくれるまでわしは主はんを無理に知ろうとはせえへん。はよぉ、わしにも本当の主はんの心を魅せてや)
     終わりの見えない駆け引き。どちらが先に折れるのか。勝負の行く末はどちらに傾けられるのか。お天道さまが見守る中、HiMERUとこはくのじれったい駆け引きが始まるのであった。
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