※まじで中身がない
いつものように先にベッドに入ってうとうとしていたら、案外早い時間にクリプトも潜りこんできた。
頬、首すじ、肩、腕へと指先がすべる。
手つきが訴える何かを感じ、問いかけてみた。
「……したいのか?」
「いや……あんた、寝てただろ」
「ん……まぁ……。入れないなら、構わない」
瞼に降りかかる前髪を退け、頬をすり、と撫でる。目を見つめていたら、観念したのか顔を寄せてきた。
「……」
音がするかしないか分からないほどの強さで、しかし確実に唇が触れた。落ち着いた吐息をお互いに感じる。上に乗り上げてきたクリプトが服をまくり、上半身裸になった。
つ、と手を伸ばし、へそから腹筋、胸元まで登る。細身で脂肪がほとんどない体は締まっていて筋肉が割れて見えた。凹凸を手のひらでなぞる。
「ふふ……」
しなやかに見えて、意外と体が固いことを思い出して思わず笑いが漏れた。ストレッチもメニューに加えた方がいい、と随分前に言った気がするが、あれからどうしたのだろうか。
「っあ、」
面白くなかったのか、クリプトも手を伸ばしてきて服の隙間に潜りこんできた。脇腹の古傷痕を撫でた手は、独特な触感と共に首元まで上がってくる。
服を脱がされやすいように背中を浮かせると、するりと取り払われた。お互い生身の肌で密着する。
予想に反してクリプトの鼓動はゆっくりしたものだった。性的興奮が勝っているかと思いきや、どちらかといえばリラックスしているらしい。
言葉なくお互いの素肌から体温を感じあった。じんわり温かくて心地良い。手持ち無沙汰になった片手で、クリプトの頭を撫でてみる。
彼の固い髪の手触りは獣の背中に似ていた。しかしそれも一部だけで、後頭部はざりざりとして毛がない。不思議な感触が面白くて、つい触り続けてしまう。
「それ、いつまで続けるんだ?」
痺れを切らしたのかクリプトが口を出す。
「ふふ……すまない。あなたらしさを感じて好きだから、つい」
ぅ、とかぐ、とか不明瞭な声を出して、クリプトは赤面していた。クリプトも手を伸ばし、私の髪をいじり出す。
手のひらが頭皮を撫でると温かくて気持ちいい。安心する、というのもあるかもしれない。撫でられた先から指先が髪を梳いて抜けていく。何往復かそれを繰り返されていたら、眠気がまた顔を出してきた。
クリプトの首すじに腕を伸ばし、抱きこむようにして目を閉じる。
「やはり、もう寝る……。おやすみ、クリプト」
「そうか。……おやすみ、ブラッドハウンド」
クリプトの片手が寝具を引き寄せてくれた。胸元にクリプトの吐息を感じながら、波に浸るようにしてそのまま眠ってしまった。