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    【twst/書きかけの文章】全然終わらない❄👑。終わらないけどぽーい。

    #twst

    ネージュ・リュバンシェという男は誰からも愛される。小石に躓けば可愛らしいと言われ、クシャミをすれば可愛らしいと言われ、セリフを噛んでも可愛らしいと言われる。生まれながらにして愛されるべくして愛され、そしてまたそれを快く受け止め、当然の様にその過剰に注がれた愛を無差別に周りに還元した。


     共演した映画のクランクアップ後、ネージュはアタシのトレーラーに訪ねて来た。アイツは小さい頃から年が近いからか、それとも共演が多いからか時間があればよくアタシの周りをウロチョロとしていた。正直、かなり気が散るから直ぐにでも追い払ってやりたい気持ちでいっぱいだった。けれど、敵を知ることも勉強の1つだと自分に言い聞かせて年上の対応を心がけ今まで付き合ってきた。今思えばそれが不味かったのかもしれない。 
    「はぁ?」
     ヴィルは心の底から理解できず、思わず裏返った声が出てしまった。その予想外の声に自身が一番驚き、コホンとひとつ咳払いをする。目の前には真っ白なベンチコートに身を包み、弾むような呼吸をするネージュがいた。ここまで走って来たのか黒檀のように真っ黒で艷やかな髪は少し乱れており、雪のように白い肌は血行が良くなりほんのり紅潮している。キラキラとしたブラウンの瞳は真っ直ぐ眉間にシワを寄せるヴィルの顔を見つめている。
    「ちょっと待って、ごめんなさい。聞き取れなかったからもう一回言ってくれる?」
    「だから、今度のお休みに一緒に美術館に行こうよ!」
     二度もしっかりと聞こえた提案にヴィルは理解が全く追いつかないようで、ネージュの方に手のひらを向け次の発言を静止した。反対の手は細い腰に置かれ、爪先まで抜かりなく手入れのされた指に少々力が入っている。一方のネージュは、まるで『待て』を躾けられている仔犬のようにヴィルの顔をその大きな瞳で健気にジッと見ている。
     ネージュの手には1枚のチケットが握られている。推理なんてものしなくても、それがアタシの分のチケットだとすぐに分かった。でも、なんで?頭の中は疑問符だらけで二の句が出ない。映画は無事にクランクアップして、わざわざ顔を合わせる必要が全くないのになぜ?
    「なにか企んでる?」険しい顔のまま質問した。
    「まさか!ヴィーくんと一緒に、この企画展に行きたいって思ってるだけだよ」期待に満ちた表情でハキハキと答える。
     不本意だけど、付き合いは長いからネージュが嘘を言っているとは思えなかった。思えなかったけど、思えなかったからそこ更に頭の中に疑問符が溢れかえる。ネージュの考えている事が未だかつて一度たりとも分かったことが無いから、仕方ないといえばそうなんだけど。
     意図が全く組み取れないながらも、ヴィルは段々といつもの冷静さを取り戻してきた。相変わらず眉間にシワを寄せているが、ネージュの前に突き出していた手のひらをくるりと天井へ向ける。それを見たネージュは、手に持ったチケットをやっと受け取ってくれるのだと思い、花がほころぶような笑顔なった。相手にチケットを渡そうと腕を伸ばせば、手のひらはギュッと萎んでしまった。反射的にヴィルの顔を見る。
    「もしかして、スポンサーから貰ったチケットが余ったの?」
    「違うよ?ちゃんと僕が個人的に買ったんだ」
     もし余り物の処理に付き合わせられるんだったら堂々と断る口実になると閃いたのに、あっさりと切り捨てられてしまった。ていうか、落ち着いて考えたら普通に予定があるからって断ればいいんじゃない。そうよ、それがいいわ。
    「……そう、ならいいわ。予定を確認するから少し待ってちょうだい」
     ヴィルはテーブルの上に置いてあった機能美を備えたスマートフォンを手に取った。いつもなら手に取るまでもなく、直近3ヶ月のスケジュールなら聡明な脳内に記録されている。しかし、この時はあえてロック画面を解除すると予定を確認する演技を始めた。形の整った眉尻を下げ「その日は先客がいたわ」と酷く残念そうな声色で伝えようとした瞬間、ホーム画面が着信画面切り替わる。震えるスマートフォンの画面には『Adela』と表示されていた。
    「…………先に電話に出ても?」
    「どうぞ」にこりと微笑む。
    「ありがとう」両方の口角をバランス良く持ち上げてから、くるりと背を向け電話を受ける。
    「もしもし?なにかあったの?…………えぇ、なるほど……」
     手持ち無沙汰になってしまったネージュは胸の前にチケットを抱いたまま、トレーラーの中をきょろきょろと見回した。室内はヴィルの几帳面な性格を感じられるほど美しく整頓されている。中でも目を引いたのは穏やかな湖面の様に磨かれた鏡台だった。
    (ここでいつもヴィーくんはお化粧してるんだ……。昔はお化粧とかよく分かんなくて、ヴィーくんしてもらってたなぁ)
     ネージュは今より少し幼いヴィルの顔を思い出す。色素の薄い長く美しい睫毛が陰を落とす、自分に向けられた実直なアメジストの瞳の輝きは今も変わらない。あの時は、それがとてもくすぐったいように感じてじっとしていられずよく怒られてしまった。そんな他愛もない出来事だが鮮明に思い出すことが出来るし、思い出してしまうとついさっきの出来事のように心臓が踊りだしてしまう。たまらずステップを踏み出した心臓を抑えるように、チケット抱く手に少しだけ力が入った。それから視線を少しずらせば、鏡の前にずらりと並んだ化粧品があった。
    (あっ!あれは僕がCMをしてるやつだ。ヴィーくんも使ってくれてるんだ。なんだか嬉しいな)
     電話中の相手の邪魔にならない、小鳥がさえずる程度の声でネージュは笑った。今度出る新作をプレゼントしたら喜んでくれるだろうか、と思いながらまた視線をずらす。先程までスマートフォンの置いてあった木製のテーブルの上には、淹れたての紅茶とレポート用紙と筆記用具があった。
    「…………アッ!!!!」
    「ッ!?なに!?……っ、あぁ、ごめんなさいアデラ。今ネージュが一緒にいるの」
     今度は風船が割れるような大きな声がネージュの口から出てきた。突然の声に流石のヴィルも驚き、上半身のみ反射的に勢いよく振り返る。電話の向こうの相手まで驚いたようだが、それ以上に声を出した本人の方が慌てふためき狼狽えている。ただ事ではないと思ったヴィルは声を掛けようとネージュに向き直る。直後、何も持っていないフリーな左手にチケットが飛び込んできた。
    「ごめんヴィーくん!」
    「はぁ!?」
    「僕、明後日提出の課題まだ終わってなくて、急いでRSAに帰らなきゃいけないのすっかり忘れてた!これ!とりあえず受け取って!今度のお休み、駅前で待ってるから!またねヴィーくん!いい夢を!」
     まさに夕立の如く勢いでネージュはトレーラーを後にした。引き止める間もなく取り残されたヴィルは、受話器の向こうから聞こえる堪えきれない笑い声をどこか遠くに感じながら手の中の贈り物を見る。
    「とんだギフトよ」溜め息混じりに溢れた。
    『えぇ、素晴らしいギフトねヴィル。行くの?』
     鈴のように笑う声は、からかう様に尋ねた。今度は純粋な憂いからため息が出た。レポートの上にチケットを置き、ソファに静かに腰掛ける。細く柔らかな前髪をサラリと掻き上げ、長い睫毛を伏せる。
    「……行くわよ。アイツもアタシのファンだから、無下にはできないでしょ」
    『そうね、ファンは大切にしないと。……後で何かあったら教えてね』
    「ふん…、あいにくゴシップにあげる情報は持ち合わせてないの」
     そう言いながら、ヴィルとアデラはまるで姉妹の様に二人で笑い合った。


     その日は雲ひとつない真っ青な快晴で、歌いだせば森の小動物たちが踊りだしそうなほどだった。そんな素晴らしい陽気の一方で、ヴィルの気持ちは薄曇りの空のようにもやもやとしていた。なぜなら、少し離れた待ち合わせ場所にいるネージュは、光輝くスターのオーラを少しも隠そうとせずに普段通りの格好でいたからだ。当たり前だが通行人たちはネージュに気付き、ちょっとしたファンミーティングのような状態になっている。
    「……ホント、何回言えば隠れることを覚えてくれるのかしら……」
     ヴィルは額を抑えながら深く深く溜め息を吐いた。それから、黒のチェスターコートを翻し、不規則に敷き詰められた石畳をショートブーツの13センチヒールで小気味良く踏み鳴らしながら、一分の隙きもないウォーキングでネージュのいる方向へ歩み寄る。ある程度近付けばネージュの方もモノトーンで揃えたヴィルに気付きブロマイドにサインを書いていた手を止め、その大きなブラウンの瞳の光量が上がった。
    「ここがネージュ・リュバンシェのサイン会場で合ってるかしら?」
     掛けていたサングラスをずらし、いかにも不満そうなアメジストの瞳を向けた。周りのギャラリーたちは、突然のスーパーモデルの登場にざわめき出している。
    「ヴィーくん!これは、ちょっと今日が楽しみすぎて早くき過ぎちゃったから、ふふっ。みんなに見つかっちゃった」
     悪びれる様子もなく、当たり前のようにネージュはヴィルへ言った。その様子にヴィルは一種の慣れと諦めを感じ、また溜め息を吐いてしまった。ずらしたサングラスを再度かけ直す。
    「……今日は1日ファンと一緒にいるつもりなのかしら?」
    「今日は1日ヴィーくんと一緒にいるつもりだよ?」
     正にお伽噺の王子さまを彷彿とさせる、新たな草花が萌えだす春の様な暖かな微笑みとセリフに外野の方が赤面している。が、言われた当の本人は慣れ過ぎ「あっそ」と味気のない返事しか返ってこなかった。ネージュは書きかけのサインを完成させるとファンの手を包むようにして返した。
    「それじゃあみんな、寂しいけれど僕に付き合ってくれてありがとう!またね!」
     そう言うなり、ネージュはヴィルの手を取り転移魔法を発動させた。キラキラと輝く光と巻き上げる風に包まれた二人はあっという間に人混みの中から消えた。取り残された観客たちは、もしかしたら今までのことは夢だったのではないだろうか、と思いながらそれぞれの生活へ戻っていた。一方の先程まで渦中の人であった二人は、さほど離れていない路地裏へ移動していた。
    「僕、あまり遠くまで移動できないんだ。ほんとはこのまま美術館まで移動できたら良かったんだけど……」困ったように笑った。
    「別に気にしてないわ。それよりも気になるのはアンタの格好よ」
    「え!?僕変な格好かな?」
    「コーディネートのことを言ってるんじゃないの。アタシはいかにも『ネージュ・リュバンシェ』であるアンタの格好が気になるの。まるでファンに見つけて下さいって言っているのと一緒じゃない」
     ネージュはヴィルの言いたいことがやっと伝わり「あ〜!」と透き通る声を裏路地に響かせた。そんな様子を気にも留めずヴィルは話を続ける。
    「アンタの巻き添えを食うのはごめんだわ。目的地の前に少し買い物に行くわよ」
     そういうとヴィルは掛けていたサングラスを外し、ネージュの少し幼さの残る顔に掛けた。
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    MAIKING【twst/書きかけの文章】全然終わらない❄👑。終わらないけどぽーい。ネージュ・リュバンシェという男は誰からも愛される。小石に躓けば可愛らしいと言われ、クシャミをすれば可愛らしいと言われ、セリフを噛んでも可愛らしいと言われる。生まれながらにして愛されるべくして愛され、そしてまたそれを快く受け止め、当然の様にその過剰に注がれた愛を無差別に周りに還元した。


     共演した映画のクランクアップ後、ネージュはアタシのトレーラーに訪ねて来た。アイツは小さい頃から年が近いからか、それとも共演が多いからか時間があればよくアタシの周りをウロチョロとしていた。正直、かなり気が散るから直ぐにでも追い払ってやりたい気持ちでいっぱいだった。けれど、敵を知ることも勉強の1つだと自分に言い聞かせて年上の対応を心がけ今まで付き合ってきた。今思えばそれが不味かったのかもしれない。 
    「はぁ?」
     ヴィルは心の底から理解できず、思わず裏返った声が出てしまった。その予想外の声に自身が一番驚き、コホンとひとつ咳払いをする。目の前には真っ白なベンチコートに身を包み、弾むような呼吸をするネージュがいた。ここまで走って来たのか黒檀のように真っ黒で艷やかな髪は少し乱れており、雪のように白い肌は血行が 4513

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