試し行為「1、2、3、4、…5」
「5.76秒。0.76秒遅い」
ストップウォッチ片手に、コンマ刻みで正確な数字を見せつけてくる上司にカラ松は内心うんざりしてた。
深い森の奥にあるコテージには、教育係の上司とカラ松のふたりだけがいた。
叫んでも声は聞こえないし、脱走しても人里にはつかない。そんな閉ざされた空間は、上司の隠れ家だった。
身を隠すための別荘だというが、実際にそのようなことに使われたことは一度もない。
あるときはターゲットを始末する場でもあり、あるときは敵隊組織の人間を拷問する場にもなる。そしていまは組織の一員を育てるため教育の場として使われている最中だった。
コテージの倉庫には多量の銃器と部品と薬品が詰められており、唯一きれいなこの空間で泊りがけの教育実習中である。
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