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    黒崎/grifith

    @grifith43057110
    雑多にFF14のうちの子小説置いてます。

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    黒崎/grifith

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    チチリさんの昔の話をちょこっと。今の世界情勢的にダメなんじゃないか…と思ったけどワンクッションで…ワンドロ大会みたいなので字書きもokみたいなツイートを見かけたので。1時間半ぐらいかな…1時間はキツいわ…💦

    意味強く生きろと残された言葉は呪いのように自分を蝕む。いつまで、どこまで?解放されたい訳じゃないのに、その言葉が自分の周りを霧のように纏わりついて離れない。重く湿った独特の空気は嫌いじゃないが昼に見るには強すぎる。ザナラーンに時折発生するこの気候は珍しく、明るく晴れた青空と白く烟る視界の差異がなかなかに絶妙だ。蜃気楼のようにゆらめくバーニングウォールを遠目に見ながら、召喚獣をそっと撫でる。
    目を閉じればあの時の光景が色鮮やかに再生される。そろそろ色褪せて欲しいものだが、自分の意志では難しい。いや、鮮やかにしているのは自分自身なのかも知れない。
    猛々しく斧を振るう相棒の背中を追いかけ、時に諌めた。木漏れ日の下で彼を座椅子代わりに昼寝した事もある。あの日々は夢だったのかと錯覚する事もあった。
    幸せだった。些細な言い合いも、食事の取り合いも、冒険者としての方向性の違いも、全部ひっくるめて。
    そう思いたい。なのに。思い出そうとすればするほど、最後の姿が頭をよぎって体が重くなるのだ。まるで今の天候のようだ。

    不意を突かれた。帝国の魔道アーマーが放った光は自分を貫くはずだった。眼前の光と目があって、時間が止まったのかと思った。粒子まで見えそうなそれが、自分のを掠めただけで済んだのは肉の盾が軌道を逸らしたから。それも2枚分。
    しなやかな体躯に竜を模した装備を纏った彼女は顔を含む右半身を失い、戦士は左肩から先を失くしていた。
    壊れたガラクタのように地面に落ちた肉塊。まだ生きていると勘違いした彼女の心臓は血液を送り続け、地面に液体を広げる。
    「ミ、ディ…?」
    自分の口から出たのは間抜けな呼びかけだった。何が起こったのか分かっている。わかりたくない。わからない、なんで!駆け寄って汚れた頬に触れる。
    「チチリ姉さん!退いて!ミディだけでも!」
    「…ミディ…ミレニア…な、んで、よ…」
    喉が渇いて上手く声にならない。魔導書の一部を破り羽ペンで指を切って自らの血で署名する。傷口というには悍ましいほどのそこに直に手を当て生命力を送り込む。それはダメだ。エーテルだけじゃない、命まで分け与えてはいけない。
    「……そいつぁ、やっちゃいけねぇ…ロロ…」
    「喋らないで!」
    「無理だ、流石に解る…ミレニアは…ダメか…」
    答えは返せなかった。もう目も見えていないのだ、おそらく感覚も。彼の足にミレニアだったものが乗っているのに。
    「…わりぃ、な…二人だけでも。逃げろ…チチリ、お前なら…」
    「嘘、でしょ?ねぇ…何言ってんの?」
    「…こんなところに、ミレニアお嬢様…置いて、行ったら…な?恨まれる、だろ?」
    俺だけでいい、と言うと大きく息を吐いた。短かった呼吸が浅く長くなる。
    「行け、生きろ…生きてくれ…頼む…」
    瞳の光が失われて行く。ゆっくりと。濁って暗くなる。響いたのは慟哭だった。赤く燃える空と血と油を吸い込んだ大地がそれを飲み込む。頬が熱い。叫んでいるはずなのに聞こえない。こんなにも一瞬で理不尽に終わってしまう。これが戦争だと、知っていた、わかっていたのに。自分は何もわかっていなかった。
    「姉さん…行きましょう…」
    「どうして、ロロ…まって!やめて!」
    自分の左肩に手を置き回復をかける彼女を制する。しかし、かまわずに癒しを与える。受けているチチリにも解る、命そのものが流れている。
    「生きるのよ。私たち。絶対死んだりしないわ」
    その決意と鼓舞がなければ自分達も床に転がっていただろう。その後の事はよく思い出せない、とにかくなりふり構わず戦線を脱したのだ。ロロは命の恩人と言うが実は逆だと思う。彼女の言葉がなければ、最愛の人の屍の上で生を終えていたかもしれない。
    「まぁ、長く生きるのも悪くない気が…最近はしてきましたわよ」
    後輩に誘われて久しぶりに仲間と呼べる人達と一緒にいるようになった。何度か断ったのに、そう言うところは押しが強い。銀髪のエレゼンの男性は目の保養だし、黒髪のミッドランダーは…ひとまず置いておこう。
    霧がだんだんと薄くなってきた。降り注ぐ太陽と乾いた風が強く吹いて視界を鮮明な物へと変えて行く。バーニングウォールもいつもの姿を取り戻しつつある。
    身体を擦り寄せてきた召喚獣をあやすように軽く叩いて空を見上げた。
    「まだ、終わったりしませんわよ。どこまでやれるのか、是非見ていてくださいまし…いえ、見てなさいよ?」
    口角を少し上げて、昔の顔をする。意地悪そうに笑うのを控えたらどうだ?とよく言っていた彼に見せつけるように。
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