素振り13 初めて唇を重ねた日を覚えてる。
近づく吐息とぬくもりに、緊張から全てが真っ白になってしまった。聞いたり、読んだ話と全然違った。
けどその風景ごと。愛しさに、今でも鮮明に思い出す。
それから何度も何度も口づけて、初めは硬かったそこは、今では柔らかい。とにかく柔らかい。
跳ね返す様なハリがあり瑞々しく、時折甘く濡れる。
体のどの部分とも違う。特別な場所だった。
体を重ねた後も、口づけは特別だ。
なぜだろう。そう思う時がある。
どんなに深くつながっても足りなくて、深く舌を絡ませる。そこでやっと満たされる自分がいる。
優しく重ねる時も、足りなくて食いつかんばかりに求める時も。
いつも何か確かめたくて狂おしい。
今もそう。
肌を合わせた気だるさに身を任せながら、もう半分眠りにつこうとするゼルダの髪に手を差し入れ、その艶やかさを味わいながら、唇に唇を合わせゆっくりとなぞるように味わう。
その香りを確かめながら、鼻先にちゅっと小さく音をたて、それからまた頬に唇へと何度も唇をよせる。
「リンク? 私、もう……」
「ん。 分かっています。 おやすみなさい、ゼルダ」
今宵、何度も求めた。
もう自分もこの心地よい疲れに身を任せ眠りに落ちたいと思っていた。
「このままで?」
「いけませんか?」
二人、囁く度に吐息が絡み、唇と唇が優しく擦れ合う。
触れ合ったまま、眠りに落ちたい。そう思っていた。
一時も離れたくない。
未だ素肌のまま抱き合って、足が絡まっていようとも。
それとはまた別なのだ。
「いけなくは……」
「じゃあ、このままで」
そう言って、また小さく音をたてて軽く口づけると、ゼルダは嬉しそうに笑った。
しょうがないといった顔だが、満更でもないその表情に幸せだと感じた。
最後に、と。その柔らかさをもう一度味わって、そのまま意識を手放す。
朝、目覚めてもきっとこのままで。
自分の失った時を埋める様に。
ゼルダのあの日々を癒したいと願いながら。
意識が夢へと落ちるその時も、ゼルダの吐息を感じ、唇の柔らかさがどこまでも寄り添って追って来る。
満たされた気持ちで、どこまでも深く落ちて行けそうな心地だった。
🕊🕊🕊
ちゅーしたまま眠るリンゼル。
ちゅーしたままがいい。
目が覚めてもいちゃこらして。