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    蛮族と姫君。パロ。狼化。小説ではなくプロット形式。たぶん情熱だけで書いてるので誤字もある。など引き続き許せる方のみお願いします。

    蛮族と姫君3泉の修行。
    馬でフロリア川を渡り、遺跡群をいく。
    荷馬車はここまで。近くにある王家の保養所から人が集められ、その者たちが荷物を運び、背の高い樹木が鬱蒼と生い茂る密林をいく。
    入口には梟が、そこからは龍の石像が続く。
    ゾナウでは、龍は勇気。梟は知恵。豚は力を表す。
    あらかじめ運ばせてあった小舟に分乗し、カズリュー川をさかのぼる。漕ぎ手と両岸から人がロープで引き数艘の小舟がゆっくりと奥地へと進む。
    今まで悪路のため避けていた泉の修行。
    勇者が立った地。
    その泉であればとなったのだ。
    伴に親しい侍女、近衛兵に加えて勇者も同行する。かなりの大所帯だ。
    開けた場所にたどり着くと、周囲の空気が変わる。
    円形の高度な石造りの広場は、昔連れて行かれた闘技場を思わせた。
    どこの誰が下賎の文化と蔑むのか。こんな場所にこんな物を作れる職人はハイラルにだって少ない。
    巨石を積み上げ、それを精巧に掘り上げる技術は尊敬に値する。見下ろすいくつもの石像を見渡し、姫君はあらためて思った。
     勇気の泉は、大きな龍の口の中にあった。
    姫君は異文化の空気にこくりと喉をならす。
    「参りましょう、姫様」
    侍女が促すと、姫君はゆっくりと一歩を踏み出した。

    フィローネの密林は、夜になってもただそこに佇むだけで、汗がふきでる暑さだった。
    しかし、地の底より湧き出る泉の水は、驚くほど冷たい。
    それが心地よいと感じるのははじめだけ。
    次第に手指の感覚を奪い、じわりじわりと体の芯まで凍えさせる。
    それは他の泉と変わらない。
    どこまでも心が冷えている。
    今日もまた力の片鱗すらつかめない悔しさは、心をチリチリと燃やしていた。
    本陣の幕屋で、ゼルダは深いため息をついた。
    凍える体を毛布で温めるが寒気がする。
    そこにするりと入り込んでくる狼蛮族。
    そのモフモフの毛で、姫君に寄り添う。
    「ごめんなさい。熱中しすぎてしまいました。本来なら、離宮で休むつもりだったのに……」
    人型だと退けるけど、狼だと平気な姫君。
    その毛に顔をうずめて、ぽつりともらす。
    「こうしていると、あの頃を思い出します。初めて会った日の事を覚えていますか?」
    キュウンと喜びの鳴き声。
    湿った鼻先が頬をなでる。
    冷たさに微笑むゼルダ。
    「あの時は、ただただ驚きました」
    今もそこにあるが、アライソ海岸を目前にした泉が美しい場所に、王家の離宮はあった。
    勇気の泉にほど近く修行に適し、海の保養も望めると、先々代のそのまた先々代のゼルダが拓いたらしい。
    城に比べたら規模は小さいが、白壁の建物は赤土の大地と緑に映えとても美しい。
    しかし、その美しさは、見た目ではない。
    太古の昔。先人が建てた3つの塔やその石積みをそのままに保存し、この一帯の古代文明についての調査研究の施設も兼ねていた。
    ゼルダは知を司る。現地の住民からは尊敬を集めていた。
     十数年前。
    その一角で騒ぎがあった。
    たまたま夏の保養に訪れていた王妃と幼い姫君は、使用人や研究者の騒ぐ声を聞き、駆けつける。
    「何事です」
    王妃の声に、人垣が割れる。
    その中心には網に捕らわれた小さな金色の毛並みの動物。
    所々、毛が枝葉と一緒に絡まり、動くたびに痛むのか、悲鳴をあげていた。
    「どこかから入り込んだようです」
    「狼の仔だ。毛色もさることなから、このあたりでは珍しい……」
    ゼルダがそっと近づくと、狼の仔は牙をむき出して吠え立てた。
    姫君は小さく悲鳴をあげて、尻もちをつく。
    「こら!姫様に何を!」
    そう言って、大人たちは網の上から狼の仔を蹴りあげた。
    「やめて!」
    「ゼルダっ!」
    「姫様っ!!」
    とっさにかばうゼルダ。
    網に近づき、王妃とその侍女が悲鳴に似た声で名を呼ぶ。
    大人の足は直前で止まり、ゼルダを傷つける事はなかった。
    ゼルダの腕の中で暴れる狼も、最初暴れたものの次第に動きをとめる。
    「大丈夫よ」
    狼の子は、密林の緑とは違う。眩しく透明なその色に吸い込まれるようだと思っていた。
    捕らえられた恐怖や痛み。周りの音が一切遠ざかる。
    経験のある大人ならば、それは恋に落ちたのだと思うだろう。
    しかし、まだ幼い狼の仔は、それがそれとも、自分が殺されると思い暴れていた事さえ、その瞬間すっかりと忘れてしまった。
    ただ嗅いだことのない甘い香りに鼻先を小さく動かし、甘えた声を出す。
    「大変!お母様!この仔怪我しています!」
    姫君の小さな手のひらに、狼の仔の赤い血がついていた。
    「早く手当をしてあげなくちゃ!湯を用意して!あと鋏!誰か!」
    そう声をあげるが、誰も動かない。
    ただ王妃だけが、そっと姫君に向かって問いかける。
    「その獣の子は、貴女と理を異にする物ですよ。貴女をその牙で噛み、その爪でひっかき傷つけるやもしれません。ゼルダ、それでも貴女はこの仔を救いたいと思うの?」
    「……っはい!」
    「貴女はこの国の次の姫巫女。大切な貴女ではなく、他の者が傷つくかもしれません。それでも?」
    「そんな事はけしてさせません!私が躾けます」
    「その言葉、信じてよいのですね」
    「はい!」
    「誰ぞ、この獣の仔の手当をっ!」
    王妃が声をあげると大人たちはすばやく動き出す。
    湯が運ばれる頃には、絡まる網は切り取られ、狼の仔はゼルダの腕の中で大人しく尻尾を降っていた。
    湯につけ、傷を洗うとさすがに痛むのか、声をあげて暴れる狼の仔。
    血は出ないものの姫君の腕。その白い肌に赤いひっかき傷がいくつもつく。
    「姫様、私が」
    見かねて侍女が申し出る。
    「大丈夫です。あなたが傷がつけば、私の心が痛いもの。それに、お母様と約束しました」
    「姫様……」
    「それよりも外にある蒲をとってきて。できるだけ沢山よ」
    傷の手当を終える頃、侍女が籠いっぱいの蒲の穂をもってきた。
    「ありがとう」
    ゼルダはその蒲の黄色い粉を傷口にふりかける。
    狼の仔は、それを舐めようと必死に傷口や穂を追いかける。
    それを抑えながら布をあて、包帯でくるくると巻いて結ぶ。
    しかし、包帯はすぐ緩み、結び目はくたりと床に落ちる。
    悲しく、困り顔の姫君。
    その姫君の手を狼の仔はクンクンと嗅ぎ、慰めるようにぺろりと舐めた。
    それを見た侍女は、こわごわ狼の仔に言った。
    「いいですか、あなた。あなたは姫に恩があります。けして私を噛んだり、引っ掻いたりしてはなりませんよ。あなたは遠くへ捨てられ、姫様はきつく叱られてしまいますからね」
    そう言い聞かせてから手を伸ばし、姫君の代わりに手早く包帯を巻きつける。
    「すごいです!ありがとう!」
    「大したことではありません。姫様。すごいのはこの仔ですわ。私の言うことを聞いて、大人しくしていましたもの」
    甘えて腕に抱きつく姫君を侍女は慈しむ瞳で見つめる。
    そんな二人の前。狼の仔が寝そべる方に、今まで聞いたこともない音がした。
    見やるとそこには、これまた見たこともない服装の男の子がいた。
    獣の骨や牙、毛を合わせたブカブカの頭飾りは、今にもずり落ちてしまいそうだった。
    それに見たことのない毛皮の衣服。
    『おまえは梟のように知恵ある者か?』
    頭飾りを上にやりながら、何事か男の子が語る。
    毛並みと同じ色の髪から空色の瞳がのぞく。今度は姫君がそれにとらわれた。
    初春の澄み渡る空の青に、全てが奪われて吸い込まれる。
    『蒲の粉は、栄養があってうまいんだ。けど、こうやって血止めになるんだね』
    巻いた包帯を指さして、語る言葉はハイラル語ではない。
    姫君は瞳をまんまるにして、彼を見つめていた。
    「何を言っているのか、わからないわ」
    『何を言ってるのかわかんない。けど、気に入った。恩ができた』
    そうして、ニコリと狼の仔だった男の子は笑った。
    『おれ、リンク』
    自身を指さして言う。そして反対の手で姫君を指さした。
    『君は?』
    察して、侍女を見やる。彼女はあまりの事に固まって動けない。
    「ゼルダ。あなたは『おれ』?」
    「ひ、姫様!」
    そこで侍女が彼女を背後にかばう。
    『ゼルダ!おれはリンク。リンク。リンク。リンク!』
    「りん、く?」
    『そうだ!』
    「リンク」
    『ゼルダ!ゼルダ!ゼルダーぁっ!!!』
    「リンク!リンク!リンク!リンク!」
    今度はゼルダが朗らかに笑いながら彼の名前を何度も繰り返した。
    幼い二人の顔を交互に、侍女は困惑の色を深めた。

    「あの後、蒲の花粉を入れたパンが宮で流行りましたね。花のような香りが、とても好きでした」
    小さく笑うと、蛮族は狼の姿から人型へと形を変える。
    途端に、距離をとる姫君。
    頬が赤い。
    それを見て、蛮族は満足そうな口元をする。
    「おいしかた。あと、ぜるだはは、やさしい。きれい」
    「そうですね。とてもお美しくて……そして、力を持っていらした」
    眉尻さげる。母を求める寂しさと忸怩たる想いがあふれる。
    「リンク、私には何が足りないのでしょう」
    「たりない?ない」
    苦笑する。言ってもわからないし、わかり合えないかと諦めの表情。
    言葉も文化も、大人の自分は名をわかり合えた喜びに胸踊らせたあの日には戻れない。
    少なくとも自分はそうだと思った。
    離れがたい温もりも、心に灯る感情もあるが、あと一つ足りない。埋まらない。
     それを察するも、言葉にならなくて蛮族も同じ表情。
    腰のポーチからあるものを取り出す。
    それは自身の体に紋を刻む薬だった。
    「て。ちょうだい」
    「手?何をするのですか?」
    右手を差し出す姫君。
    そこに蛮族は指先で体に描いた物と同じ紋を組み合わせ、手の甲に紋様を刻む。
    そこは、彼は知る由もなかったが、古くより女神の紋が浮かぶと言われる聖なる場所だった。
    「これ、ぜるだ、まもる。おれといっしょ、やつ。おれのしるし」
    何も言えない姫君。
    聖なる場所を穢したと言われかねない。
    しかし、そんな懸念よりも彼の想いが嬉しい。
    塗った直後ひんやりとしていたそれは、肌にじわりと熱をもつ。
    彼が中に染み込んでくるようだと。そう思った。
    同じくポーチから握りこぶし大の夜光石を出して、そっと枕元へ。
    『炎もいいけど、これならもっと落ち着くよ』
    「ありがとう、リンク」
    狼の姿に戻り、姫君に寄り添う。
    受け入れる姫君。手のひらで狼蛮族の頭から首を撫で、毛並みの感触を楽しむと、その首にもたれかかる。
    やはり彼からは懐かしい、あの日の香りがした。
     ランプを消すと、幕屋は幻想的な光に包まれた。
    手の甲の紋様が光で青白く煌めく。
    明日の朝、禊でおちてしまう。それがどこか惜しいと思いながら、今は喜びに癒やされて、そっと瞳を閉じる。
    それが、明日の朝も次もその次の朝日が登っても落ちぬ事に焦る事になるとは思わずに。
    「おやすみなさい、リンク」
    小さな鳴き声が夢の淵まで優しく導いてくれるようだった。
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