Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    Na0

    雑文をポイっとしにきます🕊

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💘 🍷 🍸 🍖
    POIPOI 111

    Na0

    ☆quiet follow

    プロット形式のパロ物。🐺になる蛮族。結末まで決めたけど、ポツポツ間にスキを埋め込みながらすすめてます。

    蛮族と姫君4-1

    「今夜も来たのですか?」
    するりと寝台に忍び込んできた狼蛮族に困り顔の姫君。
    当たり前とばかりにご機嫌なオッポはちぎれんばかりに振られ、ピスピス鳴らしながら鼻先をくっつけてくる。
    「どうしたら見つからずにここまで来られるの?」
    王家の姫巫女の私室。その寝台に誰にも見つからずに至るのは精霊でもなければ難しい。
    答えず、布団に潜り込む。
    (『ゼルダが寂しそうだし。それに一緒にいたいからおれはここにいるんだ』)
    姫君はため息一つ。
    身を寄せ合って、体を横たえるとその毛並みを指先で楽しんだ。
    撫でられうっとりとしながら、蛮族狼はぺろりと頬や鼻先を舐め、クンクンと嗅ぐ。
    うっとりと小さく高い声で鳴く。
    (『それにあの部屋にいると知らない女がいっぱい来ていやだ。おれにはゼルダがいるのに。話しても出ていかないんだ。心のなかで馬鹿にした目で笑うんだ』)
    怒って、フンっと大きく鼻息を鳴らす。
    「なぁに?」
    両手で口を包まれるようにして、眠たげにとろんとした瞳で見つめられると些末な事になる。
    (『何でもない。やっぱりおれはゼルダのにおいが好きだな』)
    大きくベロンと姫君の顔を舐める。
    姫君が小さく声をあげる。
    「もう!やめてください」
    鼻先を押される。けどそれをすり抜け、クンクン、クンクンと姫君の髪を耳をその首筋のにおいを嗅ぐ。
    くすくすと姫君の笑い声があがる。
    年若い男女が閨を共にする空気は欠片もない。
    ただそこにあるのが嬉しいと、しばらく赤い幕の向こうから睦まじい気配がしていた。

    翌朝。まだ眠る姫君を残して外に出た。
    枕元に美味しそうに熟れたリンゴと大きい団栗を置いてきた。
    リンゴは蛮族の好物であり、食料庫にあった1番美味しいにおいのするやつを選んだ。団栗はジャングルと違いここでは珍しくないものらしい。森に行けばすぐに見つかる。しかし、それを渡すと姫君がよくニコニコしていたので、夜を共にすると別れを惜しんで置いてくるのが習慣になっていた。一度、カエルと肉を置いてきたら騒ぎになったらしいので、それはもうやめた。
    『ここは臭いし。汚い』
    蛮族は誰ともなしに呟いた。
    多くの人間のにおい。人が集まればそれだけ食べる物が必要になり、その後の腐りゆく食べ物の臭い。排泄物。それらを誤魔化すキツイ香りのを放つ花。それらの臭いをまとわせる男に女。
    大量に流れる水はそれらをかき混ぜ、一緒に流そうとするが、蛮族の鼻にはあまり意味はない。
     城門。二の丸をくぐる蛮族。
    腕に姫の袖がはためく。
    それを見下ろす兵士たち。
    侮蔑に興味、わずかな称賛。卑猥な笑み。
    首筋にチリチリとした嫌な物がささる。
    彼にとっては蚊に狙われたくらいの物だ。
    些末な物。
    しかし、それが愛する女に向けられたら許さない。
    それを視線にのせ、一瞥する。
    すぐに不快な虫の音はやんだ。

    「いよいよ、明日でございますね」
    侍女が姫君の髪をブラシで何度も何度も梳いている。
    回数を重ねる毎に、香油が染み込んで艶やかさを増す。美しくお育ちになられたこのお姿。早逝した王妃様にお見せしたかったと、侍女はこぼれそうになる涙を堪えた。
    「そうですね。……お願い。彼には知られたくないのです」
    「承知しております。文化の違う彼の事。たぶんその場を見ても気づきますまい」
    「そうだと……いいのですが……」
    姫君は右手の甲に視線をおとす。
    蛮族が姫君に求めるのは、ハイリア人達の価値観でいう愛ではないと思っていた。
    もっと原始的な衝動的で欲に近いのかと。
    けど、この紋は姫君の間違いを教えてくれる。
    蛮族は姫君を深く愛して、慈しみ、尊重してくれている。
    逆にどうだろう。役目のため、血をつなぐため。大義名分に。義務として契約を結び、子を成し、それを子にも同じく強いていく。
    (それはまるで…獣よと。蛮族よと。そう蔑む私達の方がまるで…)
    『愛してる……』
    姫君がぽつりと呟いた。
    鏡台に情けない顔がうつっている。
    「何か?」
    「いえ。何も」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍😍😍😍😍😍😍😍😍😍☺☺😊😊😊😊🐺🐺😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works