匂いと記憶 壁にかけられたカレンダーを見る。
横に長く伸ばされた矢印。
その上には汚い字で書き込まれたスケジュール。
数日間に及ぶ遠征。
矢印の始まりに指を置き、今日の日付までをなぞる。
矢印の終わりには届かない。
──やれやれ、随分とセンチメンタルだな。
若造が帰ってくるのをこんなにも待ち侘びるなど。
クソ汚い文字ですら、堪らなく愛おしいなんて。
仕方ないだろう、と少し拗ねてみる。
恋人になったのだ。
私のものなのだ。
執着するものが手に届かないところにあるのだ。気もそぞろになったとしても仕方がないだろう?
一日たりとて目を離したくないのだ。
同じようで毎日違うロナルド君の変化を見逃すなどありえない。
全部、全部私のものなのだから!
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