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    いっちょぎ

    色々やらかす腐った大人。
    現在は休暇。に大ハマりして、リゼルさんを愛でつつジルリゼを愛して精ゔんを可愛がっております。

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    いっちょぎ

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    ジルリゼ。
    去年ぐらいに、『毒に苦しむりぜさんが見たい!』と大騒ぎしたネタを少し形にしてみました。
    ……個人的にはいちゃらぶだと思ってます(笑)

    毒の話 夜更けの宿屋。
     その中の部屋の扉の一つの入り口が音もなく開き、中から一人のほっそりとした男がそっと出てきた。十分に辺りを窺いながら階段を下り、そっと裏庭へ出るとそこにある木の下へと静かに移動する。
     男……リゼルは、さやさやと夜風の吹く心地よい木の下に腰を下ろしながら、小さく息をついた。その瞬間、ズキリ、と痛んだ脇腹に眉を寄せる。同時にヒヤリと冷たい汗が背中を流れて、リゼルは低く呻いて躯を丸めた。




     とある魔物の核の採取に、ジルとイレヴンと共に森の中へと足を踏み入れたのは昼過ぎの事。
     昼なお暗い、だがチラチラと陽射しの射し込む森の中は、適度な湿度と気温が保たれていてリゼルの目を細めさせる。今回は近くにある沼に棲む魔物が落とす核を幾つか持って帰る事が目的だった。
     目的地である森の中にある大きな水溜りのような小さく浅い沼で、体調を崩しているという母親の為に水辺に生える薬草を取りに来ていた少年がこの沼地の辺りを棲み処としている魔物に襲われていたのを見つけたのは、イレヴンだった。
     見捨てるという選択肢は端からなく、そのまま少年を庇いながらの戦闘に突入したのだけれど。
     ぬめりを帯びた、蛙のような皮膚を持ち、二足歩行で手には棍棒を持ったその魔物は、倒しても倒してもキリがない程湧いてくる。だがさして手強い敵でもなく、少しずつ数を減らしていく中、それは、本当に小さな不運がほんの少しずつ重なっただけの事だった。
     少年を魔物から庇いながらの戦闘は、魔物の数の多さと、どうしても少しずつ互いの間に出来てしまう距離に、気が付けば少年の周りに隙が出来てしまう。リゼルに言われるままに場所を移動していた少年は、ふと地面を見ていた視界に明らかに人間のものではない足が入ってきた事に気が付いて顔を上げた。そして、目の前に太い棍棒をゆっくりと振り上げている魔物に顔を引きつらせた。振り上げられた魔物の武器から逃げられず、少年は恐怖にその場に固まってしまう。このままでは危ないと、その少年と魔物の間に飛び込んだのは、一番近くに居たリゼルだった。
     振り上げられ、勢い良く棍棒が振り下ろされるとほぼ同時に横っ飛びに間に飛び込み、魔銃を構える事も、咄嗟に受身を取る事も、崩したバランスを立て直す事も出来ず、殴られる準備をして躯に力を入れる暇もなかった。
    「リーダー!!」
    「あの馬鹿……ッ!」
     リゼルは振り下ろされた一抱えもありそうな棍棒にまともに脇腹を痛打され、そのままその躯は浅い水場へと叩き付けられた。叩き付けられた勢いで数回浅い水場を転がり、リゼルはその場で身動き一つ取れずに蹲る。
    「ぐ……!」
     一瞬意識が遠のきかけたが、イレヴンとジル、そして少年の叫び声にヨロヨロと躯を起こそうとすると、ふと視界が翳った。目を上げると再び魔物がリゼルに向けて棍棒を振り下ろそうとしていた。己の得物を構える余裕もなく、振り下ろされようとする棍棒を見上げるしか出来なかったリゼルはしかし、魔物がビクリ、と大きく震えるなり動きを止めてしまった事に首を傾げた。魔物のぬめぬめとした大きな躯は、そのまましばし硬直した後、ゆっくりと傾き水場に倒れ込む。
    「大丈夫か?」
    「リーダー! 大丈夫? 平気!?」
     重たげな音を立ててその場に崩れ落ち、ビクン、ビクン、と痙攣を起こして、やがて動かなくなった魔物を呆然と見ていたリゼルは、頭上から掛けられた声に慌てて声を上げた。
    「ジル……っ、イレヴン……!」
     ヒュ……、と剣に付いた魔物の体液を払い、腰を折ってリゼルに手を差し出したのは、ジルだった。その後ろで眉を寄せているイレヴンが同じように双剣を払って、ジルの肩越しに顔を覗かせている。慌てて躯を起こしたリゼルは、脳天を突っ走った痛みを拳を握ってやり過ごすと、ぎこちない笑みを見せる。
    「っ、すみません……。っ、俺は、大丈夫なので……」
    「………………」
     額に浮いた脂汗も、頭からずぶ濡れになったお陰で解らないはずだ。
     必死で笑顔を見せるリゼルに、ジルは小さく息をつくと、真っ青になっている少年を手招く。
    「……こいつに飲ませてやってくれ」
    「わ、解りました!」
     大きく何度も頷いて駆け寄ってくる少年を確かめて、ジルはその手に迷宮産の回復薬を手渡すと、リゼルと少年を背に庇うように再び剣を握り直し、少しずつ近付いてくる魔物の群れへと戻った。色々と言いたい事もあるのだろう、イレヴンも口をへの字に曲げると、まるで八つ当たりのように魔物の群れへと突っ込んでいく。
     少年が差し出してくる薬を有り難く頂いて強引に飲み込むと、ガンガンと躯中を叩いていた痛みがスッと引いてくる。目に涙を浮かべて、何度も謝りながら様子を窺う少年に笑みを見せて頷くと、少年はようやくホッとしたように笑みを見せた。
     少年に母親の為の薬草を引き続き探すよう言い置いて、リゼルは魔銃を構えながら戦闘の中へと戻る。
     チラリと横目でリゼルを見たジルに、苦笑を浮かべながらもう大丈夫だと告げると、ジルは無言で一度ポンとリゼルの背を叩いただけだった。




     依頼を終えて宿に戻ったリゼルの傷が疼くような痛みを発し出したのは、夜も更けた頃だった。
     ズクンズクン、と躯中が痛みに疼いて眠る事も出来ない。指先が冷たく痺れるような感覚に小さく呻き声を上げそうになって、リゼルは慌てて唇を噛み締める。
     このままでは周囲に気付かれると、夜の闇に慣れた目でポーチの中から回復薬を取り出すと、リゼルはそっと部屋の扉を開き、宿の裏手へと回った。
    「ぅ……っ、く……、ふ」
     息をするのも辛い。熱を発する脇腹とは逆に、手足の先は冷え切っている。
     熱を持った脇腹を押さえて躯を丸めながら、持ち出してきた回復薬を痛みに震える手で飲み込もうとすると、
    「恐らく、それだけじゃあ、痛みは引かねぇぞ」
    「!」
     聞きなれた声にビクリ、と大きく肩を震わせて、リゼルはその衝撃に突っ走った痛みに躯を起こす事も出来ずに脇腹を押さえて蹲った。
    「……っ、じ、ジル……っ!」
     声を出す事すら辛い。蹲ったまま、のろのろと首だけを回して見上げると、闇に慣れたリゼルの目に、満天の星空を背に立ジルが呆れたようにリゼルを見下ろしているのが見えた。
     いつの間に追い掛けてきたのだろうか。まったく気配に気付かなかった。
    「……どこへ行くのかと思ったら」
     言いながらリゼルの傍らに膝をつくと、ジルはリゼルに傷口を見せるよう促した。
     躊躇うように口ごもり、首を横に振りかけたリゼルを目で制し、
    「ああ、そうか、自分で脱ぐのも辛ぇか」
     ジルは一人で納得したように呟くとリゼルの服へと手を伸ばし、きっちりと着込まれたリゼルのシャツの裾を下衣から引っ張り出した。
    「! ちょ、ジル……ッ! ま……っ、待って……っ、待って下さ……っ、ぅ!」
    「無理すンな。動くと痛むんだろ?」
     慌ててジルの手を止めようとして、背骨を駆け上がった痛みに硬直するリゼルに負担が掛からないように横向けに寝かせ、傍らに膝をついてリゼルのシャツをめくり上げると、現れた肌にジルは盛大にため息をついた。
    「やっぱりな」
    「っ、ぅく……、何、ですか……?」
     月明かりに露になったリゼルの脇腹は、目を背けたくなる有様だった。そこはジルの手の平程の大きさで真紫に腫れ上がり、うっすらと血が滲んでいる。しかし、ただ殴られただけの傷には見えなかった。
    「毒が回っちまってンな」
    「……ッ、毒……っ、ですか……?」
     魔物の棍棒に最初から仕込んであったのか、それとも偶然だったのか、リゼルの傷口から毒が入り込んだ。どうやらその量があまりに少量だった事と、殴られた痛みが先にあった事、回復薬が一時は効いた事で気付かなかったが、入り込んだ毒はジワジワとリゼルの血液に乗って躯中へ巡り、数時間経った今になって、こうしてリゼルを苦しめているらしい。
    「あいつがひょっとしたらって持たせてくれた」
     ジルの手の平にあるのは解毒剤だろうか。
    「イ……レヴン、も、気付いてました……、か?」
    「お前の事で、あいつ以上に敏感なヤツは居ねぇよ」
     ただ、自分が行くとリゼルの事だ。心配をさせないよう無理をしそうだからと、イレヴンはジルの手に解毒剤を押し付けた。むす、と子供のように拗ねていた顔はとても納得をしているようではなかったけれど。
     言いながら傷口の際に指を這わせると、リゼルは息を詰めてビクリ、と小さく躯を震わせた。
    「ったく、格好つけるのは構わねぇけど、もう少し自分の躯を省みるんだな」
    「……そうは、言って……も、咄嗟のこ……っ!?」
     そこでリゼルの言葉は途切れた。
     リゼルの脇に手をついたジルが、躯を折ると不意にリゼルの傷口に唇を寄せる。ギョッとしたように息を呑んで目を見開いたリゼルは、だが次いで襲った鋭い痛みに息を呑んで目を閉じた。
     柔らかな舌に傷口を舐め上げられ、その唇に傷口を塞がれると、そこから滲む血を強く吸い上げられた。
    「っ! ……く、ぁ……っ、ふ……」
     身を捩って逃げようとすると、肩を掴まれ押さえ込まれる。痛みに逃げ場のないまま、ギリ……と地面に爪を立て、躯を強張らせながら息を潜めるリゼルの脇腹にしばし唇を押し付けていたジルは、やがてあっさりと躯を起こすと口の中に吸い上げたリゼルの血を吐き捨てた。グイ、と手の甲で口元を拭ってリゼルを見下ろすと、額に脂汗を浮かべてぐったりとしている。
    「き、君って人は……!」
     今更こんな事をしても遅いだろうに。
     掠れた声で、息も絶え絶えにそう言って力なく睨み付けてくるリゼルに面白そうに喉の奥で笑って、ジルはリゼルの横に腰を下ろすと、傷に障らぬようリゼルの躯を抱き起こし、持ってきた解毒剤と水筒を手渡した。
    「まぁ、そう言うなって。久し振りにお前に触れる言い訳が出来たんだ。このままここで押し倒さなかっただけでも良しとしとけ」
    「……………………」
     抱き起こされるまま、リゼルは躯を起こすと無言で解毒剤を飲み込み、ついでに己が持ってきた回復薬も飲み込む。差し出された水筒から水を流し込んで、リゼルはようやく小さく息をついた。イレヴンの解毒剤と回復薬が傷の痛みを引かせてくれたお陰で、少し楽になった気がする。
     めくり上げられた服を整えながら、躯を支えてくれるジルの腕の力強さに知らず体重を預けてきたリゼルに笑って、ジルがゆっくりとリゼルの肩を抱き寄せると、リゼルは大人しく躯を預けてきた。
    「抵抗しねぇんだな?」
     以前のリゼルならば、こんな屋外で、ひょっとしたら人目につくかもしれないと、赤くなったり青くなったりして逃げていただろうに。
    「君に触れられる言い訳ですよ。……久し振り、ですしね」
     見下ろすリゼルの線の細い横顔は、先程までの苦痛に歪んだものではなく、静かな落ち着いたものだった。相変わらず整った顔立ちをしていると思う。柔らかそうな髪が秀でた額を覆い、細く通った鼻筋と、薄い唇、細い顎。
     穏やかで清廉な空気を纏うこの男が、自分の隣にいる事が当たり前になったのはいつの頃だったか。
     つい最近パーティに最年少の青年が加入した事で、隠しているつもりはないがまだ何となく二人きりの距離がはかれず、おかげでそのつもりはなくとも強制的な禁欲が続いている。
     まぁ、何気に機微に鋭いあの色鮮やかな青年はジルとリゼルの関係に気付くでもなく気付いたらしく、さりげなく気を遣ってくれるが故に、どうやらリゼルはなお更妙な照れくささに身動きが取れなくなっているらしい。
     自由気侭に、奔放に休暇を楽しみつつ、時にこうして初心な反応を見せるリゼルを好ましいと思いつつ、思う存分リゼルに触れられない事にほんの少しの不満も感じてしまう。
    「……侭ならねぇもんだな」
    「何か言いました?」
    「いや」
     小さく呟かれたジルの言葉に、リゼルは首を傾げながら目を上げる。それに苦笑しながら何でもないと首を振って、ジルは呼吸も落ち着いてきたリゼルに部屋に戻るよう促した。大人しく頷いて、ゆっくりと腰を上げたリゼルは、
    「……夜遅くに申し訳ありません。ですが、助かりました。有り難うございました」
    「気にすンな。あいつにも明日でも礼を言っとけ」
    「はい」
     頭を下げるリゼルに軽く笑って手を振ると、穏やかな笑みを見せて来た道を宿の部屋へと戻りかけ、不意に思い出したようにくるりとジルを振り返った。
    「あの、」
     不思議そうに目を瞬くジルを見下ろして、リゼルは躊躇いながらもモゴモゴと口を開いた。
    「……俺は別に、あのまま押し倒されていても、良かったですよ?」
    「! は、……は?!」
     思いがけない言葉に絶句したままポカンと口を開いてしまったジルに、うふふ、と小さく笑うと、リゼルは今度こそジルに背を向けて宿へと戻っていく。
     そのほっそりとした後姿を呆然と見送って、不意にジルは小さく噴き出すと、そのまま腹を抱えて笑い出した。
    「……参ったな」
     少しずつ二人の距離の取り方も解ってきて、少しずつ触れ合う事がもっと当たり前になればいい。その時、リゼルはどんな顔を見せてくれるだろうか。
    「楽しみなような、怖いような……、だな」
     ジルは背後の木に背を預けながら、面白そうな笑みを浮かべた。
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