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    タコライス

    イベントのための臨時展示場所です

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    タコライス

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    12/20うれとも展示作品となります。
    ・キメ学軸宇煉SSです。キメ学軸&宇随さんの誕生日前日のお話となっています。
    ・二人の関係的には、お泊りもするような関係にステップアップした状態。
     そんな時に、煉獄先生が次ステップアップするべく、頑張ります。

    【新作】【キメ学軸】【宇煉】time of love『関東地方に大型の台風が接近しています。
    まだ校内に残っている生徒は早めに下校しましょう。
    尚、明日は台風のために休校です』


    ------------------

    校内放送が聞こえた。
    これで今日何度目の校内放送だろう。

    「なぁ、もう帰らないと」
    杏寿郎は、そう宇髄に言った。
    「いやだ」
    宇髄はそう返す。

    もう何度このやり取りをくり返しただろう。

    学園の中で一番高い場所、展望台。
    そこへ向かう階段は、展望台へ向かうためだけに存在している故に人が入ることは、ほぼない。

    美術室と言うある意味個室がありながらも、ここが宇髄の一番のお気に入りの場所だった。


    季節は11月にもそろそろなると言うのに、どうやらこれから今年最大の台風が上陸するらしい。

    窓の外はあまりの雨の激しさにすでに夜のように見える。
    窓に打ちつける雨の音が、尋常ではない降りなのだと教えてくれる。
    この展望台は、床以外はすべてガラスで作られているのだが、そのガラス部分は、真っ白な状態である。
    その状態が、尋常ではない降りの強さを、更に体感させ、少し恐怖すら感じる。


    宇髄がいなければ、杏寿郎はわざわざここに来なかっただろう。
    宇髄がいるから、宇髄が動いてくれないから、
    こうしているわけだが。
    いざるをえないわけだが。


    『校内に残っている生徒はすみやかに下校して下さい。』

    「あ。まただ」
    繰り返されるアナウンスに、杏寿郎は少し焦り始めていた。
    台風の影響で、多くの生徒が通学用に使用している交通網が止まる可能性があるとの事で、学校は半日で休校の決定を下した。

    「明日は台風直撃の一日になりそうだから、全員自宅学習で待機」

    緊急で開かれた職員会議で決定した、『明日の休校と自宅学習の旨』を生徒達に告げたのは、ついさきほどのHRのことだった。


    (この天気だから 我々も確かに早く帰らないと…)

    これからどんどん台風が近づいてくるらしい。
    杏寿郎や宇髄は大人は言え、危険な天候であることには変わりがないのだから、今のうちに帰宅した方がよいに決まってはいる。

    しかし、その宇髄の姿は職員室にも美術室にも見えなかった。
    となると…

    (…宇髄は…今日はあそこかな…)

    この2箇所にいない場合、杏寿郎は宇髄がどこに向かうのかだいたいわかっていた。
    学校内にいくつかある、宇髄のお気に入りの”サボり場所”。
    おそらく今日は、この天気の中、あそこに違いない。
    そう思ってきてみたら、案の定。

    「…な?帰ろう、宇髄」
    「いやだね」

    そして、宇髄がここに来て帰りたくないとダダをこねる理由も、
    実は杏寿郎は知っている。わかっている。

    明日は、宇髄の誕生日なのだ。



    ------------------

    前々から約束をしていた。
    明日は仕事帰りに、学校からは少し遠いか、繁華街を過ぎて小径を少しはいったトコロにある、小さなふぐ料理店で豪華にふぐ刺しを食べる予定だった。
    そして、その帰りにコンビニでお酒やらつまみやらを買って、杏寿郎は宇髄家に泊まる予定でいたのだ。

    久しぶりの、お泊りデート。
    それが、この悪天候である。

    しかも、学校が休校となればお互いに家をでる事もままならないだろう。
    明日の宇髄の誕生日、
    杏寿郎と宇髄が出来る事と言えば、スマホ画面越しで話すくらいしか、多分、手立てはない。

    「帰りたくねぇ」

    展望台の階段にあぐらをかいて座り頑に帰る事を拒む宇髄の姿に、
    杏寿郎はどうしたものかと困ってつぶやく。

    「…今日の君は、珍しく頑固だな…」

    気持ちは充分に、わかる。
    明日の予定をとても楽しみにしていたのは、宇髄だけでない。
    杏寿郎だって同じだ。
    しかし、だからと言って、天候にはどうにも逆らえるわけがないのだし。

    『明日は休校です‥‥』

    校内放送はまだ続く。

    さて、どうしたものか…と杏寿郎は思案にあぐねていたが、ふと外の様子に目を向けると、先ほどより更に悪天候に変化しつつあるその姿。
    杏寿郎は本格的に焦り始め、いささか強引ではあるが
    強行突破にでる事にした。


    「…え?煉獄…?」

    突然の杏寿郎の行動に、宇髄が戸惑い目を見開く姿が杏寿郎の瞳に見えた。

    至近距離で宇髄の驚いている様子を感じつつ、杏寿郎は宇髄の柔らかい唇に舌先を伸ばしてそっと這わせる。
    ゆっくりと宇髄の唇を己の舌先で濡らした後、薄く開けられたままの宇髄の口内へと、杏寿郎は舌を差しいれた。
    温かい宇髄の口内と少し冷たい宇髄のその歯を交互に嘗め上げて、
    そして、
    温かく柔らかい舌を下からすくうように自分のそれで絡めとり、はじめは軽く、そして次に強く吸った。

    「っ…」

    鼻からもれる宇髄の息が、ただ愛おしく感じる。
    頬にそっと触れている杏寿郎の指から
    宇髄の体温が次第に熱くなってゆくのを感じながら
    それでも杏寿郎は止める事なく、
    深く深く口付けした。

    すべてを嘗め尽くすほどに。


    ------------------
    『最終下校の時間です…』


    どのぐらい、こんなにも激しいキスをしていたのだろうか。
    先ほどから何度も聞いていたはずの校内放送は
    いつの間にかまだしつこく学校内に残る生徒を追い出すかのような言い方に変化していた。

    「…っ…」

    なごり惜しくも離した宇髄の唇と杏寿郎の唇の間に、
    激しさを物語る透明な糸が引く。

    「本当は、明日の泊まりで、
    君にお披露目する予定だったんだ…」

    杏寿郎は自分がしたこの行為に対し
    今さらのように恥ずかしさがこみ上げてきて
    そっぽを向きながらそう呟いた。

    「…」
    宇髄は何も答えない。
    いや多分答えられないのだと、思う。

    こんな激しいキスは、杏寿郎からした事がないから。
    して良いのかわからなかったし。

    だから、誕生日と言うスペシャルな日に残しておいたのだ。
    杏寿郎の、
    宇髄への、
    愛情と、欲望を。


    「明日は会えないとは思うが…でもスマホ越しに会えるから…」
    恥ずかしさで杏寿郎はまだ宇髄の方を向く事が出来ずにそう告げた。

    「だから、今日は、もう帰ろう?」

    一緒にいたい気持ちは杏寿郎だって一緒だ。
    でも今は緊急自体だから、
    と自分に言い聞かせてそんな言葉を口にした時。

    「も、一回…」

    宇髄から出た言葉に、杏寿郎は思わず顔を向ける。

    熱を帯びてどこか潤んだその瞳と、
    薄く開いたままのその赤い唇の熱っぽさは
    一体何を
    『もう一回』と言っているのかなんて…。


    (逆効果だったかな…)


    杏寿郎は心の中で思わず苦笑する。

    なのに、杏寿郎の身体は
    宇髄の、宇髄の言葉にあやつられているかのように
    宇髄へ預けてしまうのだ。

    嵐が窓を叩く音が大きくなるのと同じように
    杏寿郎と宇髄の口づけも一層激しくなる。

    (あと3回校内放送が鳴ったら帰ろう…)


    そんな言い分けを自分にしながら、
    とりあえず1回目が聞こえるまではと、
    杏寿郎は宇髄の柔らかさに

    包まれていった。

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