開心 ロドスの甲板は今日も賑やかだ。家庭菜園や薬草園の手入れで泥まみれになる者、それに水をかけてしまって慌てる者、牧場で家畜に餌をやっていたらば鼻水をなすり付けられる者、出るも入るも忙しく喧しい。早朝から、ここはちょっとした小都市のような有様なのだ。有事には物々しい装備に身を包み、凛々しい顔立ちで外へと赴く人々も、束の間の平和を感受している。日常と非日常の危うさを、当たり前の積み重ねで跳ね除けているのかもしれない。
中でも熱気を孕む集団は、甲板中央部に陣取る一団だ。なんの道具も手に持たず、寧ろ動きやすい簡素な出立だけで手足を動かす人々は、不恰好な群舞を踊っているようにも見える。
「自分の体のどこに力を入れているのか、己の”意”を感じよ。無駄な力を抜き、想うがままに己の手足を動かせることが第一だ」
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