藍に塗れた偶像 神なんていないと思ってる。祈り乞えば助けてくれる存在だなんて馬鹿げているだろう。キースは神の存在を知った時からずっとそう思っていた。
そんなキースにとって、村全体で神を信仰しているこの場所では居場所なんて最初からあってないようなものだった。研究者として解剖学や医学も少し齧っているため、有事の際に必要な医者として置いてもらっているだけ。それさえなければすぐにでも追放されそうなほどだ。
キースが、魔族や悪魔などそういった類のものを研究していたから。
神の存在を知ったとき、同時に悪魔のことを教えてもらった。村の人々は皆「悪魔は穢らわしい」「堕落したその様はいつか人間を滅ぼす」などと口を揃えて言う。しかし、キースの瞳にはそれが魅力的に映ってしまった。救いも助けもいらない、自分勝手に自由に飛び回る黒い翼に見惚れてしまったのだ。親から虐待ともとれる扱いを受け毎日怯えていたキースは、助けを求めようと救われないことを知っている。それなら何にも囚われずに自由に過ごしてみたかったのだ。
14506